猛暑が続く京都、ミモロは、北西部にあたる鷹峯の「光悦寺」にやってきました。
そこは、まさに静寂に包まれた場所。「だれもいない…」そう、この時、「光悦寺」にいたのはミモロだけ。
紅葉の時期は、大勢の人たちが通る独特の石畳の道も、本来の静けさを感じることができます。
この鷹峯の一帯は、元和元年(1615)に本阿弥光悦が徳川家康から拝領した土地。そこに、一族郎党をはじめ、さまざまな工芸にたずさわる職人たちと共に、居を構え、工芸集落を営んだ場所です。
本阿弥光悦は、御存じのとおり、日本の芸術の先駆者として知られるアーティスト。
本阿弥家は、代々刀剣の手入れ、鑑定などを家業にする家柄。加賀前田家の扶持を父の代からうけ、禁裏や将軍家、また諸大名の御用を務めましたが、それだけにとどまらず、豊かな芸術性が、多くの作品を生み出し、日本の文化に大きな影響を与えました。
この「光悦寺」は、彼の死後、その御霊をおよび、先祖供養をする寺として日蓮宗光悦寺となっています。
光悦は、茶人としても知られ、古田織部などにも教えを受け、千宗旦とも深く交わり茶道の奥義を極めました。
ここ「光悦寺」は、まさに本阿弥光悦のすぐれた芸術性を集約した場所。
その洗練された雰囲気は、訪れる人を魅了してやみません。
「なんか落ち着くね~」
ミモロも、この雰囲気にすっかり心奪われたよう。
敷地内には、緑の木々の間に、さまざまな7つの茶室を見ることができます。
その造りは、後の茶室に大きな影響を与えるもの。
「これ、光悦垣っていうんだよね~」とミモロが立ち止まったのは、竹で組まれた独特の垣です。
秋の紅葉の時期は、この垣を鮮やかなもみじが彩りを添えるのです。
「紅葉も素晴らしいだろうけど、緑の時期も素敵…」
なにしろ、しっとりとして趣を、独り占めできるんですから…。
広い敷地の散策路を、ミモロはゆっくりと進みます。
緑の木々の陰に、ひっそりと本阿弥一族の墓所が…。そこにもお詣りするミモロです。
楓などが枝を伸ばす小路を抜けると、目の前にのびやかな山の景色が開けます。
鷹ヶ峯、鷲ヶ峰、天ヶ峰の鷹峯三山が一望。「光悦さんも、この景色、きっと大好きだったんじゃない?」
丸みを帯びた稜線は、光悦の作品のラインにも通じるものがあるように思われます。
「お茶室がある…ちょっと休憩しよう…」
ミモロは、お茶室の軒でひと休み。
敷き詰められた石にも、アートを感じます。
山を渡る風にのって、聞こえるセミの声…「もうセミ鳴いてるんだ…」
ミモロは、耳を澄ませて、その声をじっと聴いていました。もっと夏が深まれば、蝉しぐれが山に響くことでしょう。
茶室の造りに興味を抱くミモロ。
さりげない設え・・・でも、よ~く見ると、太さが揃った竹など、素材ひとつひとつが厳選されたものであることがわかります。
「京都の町中は、すごく暑いけど…ここは、ちょっと涼しい感じ…山の上だから、風があるみたい…」
確かにこの時期、散策は、厳しい季節ですが、郊外の観光名所は、この時期がおすすめ。
本当に静かです。
「来てよかったね~」とミモロ。ぜひ、この時期もお見逃しなく…駐車場ももちろんガラガラでした。
*車で行くなら、絶対に31号線から、「東急へーベストクラブ」の前の道から行きましょう。「しょうざんリゾート」の正面入り口沿いの道を進んでしまったミモロを乗せた車は、「光悦寺」に行く近道を通過。でも、いままで経験したことがないような急な坂道を上ることに。「車ひっくりかえっちゃうんじゃないの~」と、ミモロも震えるほどの急こう配でした。目の前に、続く阪に初めて恐怖を覚えました。
*「光悦寺」京都市北区鷹峯光悦町29 075-491-1399 拝観時間:8:00~17:00 大人300円 交通:市バス源光庵前、徒歩3分。 金閣寺から徒歩30分
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