彼女の名誉のために書いておかなくてはならない。昨日の3万円は戻って来た。しかもイチゴのおまけまで付いていた。逆に出費させてしまったようで申し訳ないと思う。どうしてお金が必要となったのか、足らなかった2万円はどうしたのか、聞くのは止めた。誰にでも事情がある。相手から話してくれるならともかく、自分から問い詰めるようなことはしたくない。
倉橋由美子さんの『大人のための残酷童話』は怖い話だが面白い。我が家からも見える養老山脈、その山の谷に養老の滝があり、そのいわれはこの地方の人ならだれでも知っている、親孝行の息子が滝の水を汲み上げるとお酒に変わる物語だ。ところが倉橋さんは、「ただの酒が無尽蔵に湧いて流れているという評判を聞いた酒好きの者どもが、百姓も漁夫も商人も、その業を棄てて養老の滝に群がり、そのまま酔死するもの数知れず、谷は悪臭に満ちている」。
そして「(それを知った)天子様はお怒りになって、養老の滝に近づくことを禁じるとともに、かの樵の親子を捕らえて斬罪とされましたが、禁制の谷を目指す者は跡を絶ちません。(略)養老の滝の周囲に柵をめぐらし、関所を設けて黄金を徴収するに至って、騒ぎはようやく止みました」と語り、教訓として、「ただ酒は人を堕落させる」と結んでいる。
先日、若い社長と話す機会があった。お酒の話になったので、「市長選挙に落ちて、何もかもこれで終わったと思ったら、解放された気分になって、毎晩お酒を頂いています」と言うと、「いや、意外でした。お酒は余り飲まない方だと思っていました」と言う。「正義感の強い真面目人間、そんな風に見えていた」と言う。「ありがとう、感謝します」と言いたかったが、「もう、若くないからね」と言ってしまった。
15日は「効き酒」会へ招待されている。それこそ「ただ酒」を飲むことになる。天罰が下りませんようにと祈っておこう。