卒業生の男たちは貫禄が出ていた。女たちは高校生の時よりも美しくなっていた。この子たちと出会ったのは昭和45年だから、48年も前になる。今年で彼らも65歳を迎える。なのに、話していると全くあの時のまま、彼らも私も青春時代だった。3年間を同じ校舎、同じ教室で、戯れて過ごした。あの時から大人びていた生徒は今も大人っぽいし、あの時から子どもっぽい生徒は今も変わらない。
高校生の時は社会研究部に居て、確か70年安保のデモが行われた集会で、彼はベ平連の隊列にいた。そんな彼が昨日は、「先生、国境を強化しなくてはダメです。憲法は改正して、負けない国にしないとやられてしまいます」と私に話しかけてきた。「いったい何を何から守るの?」と私は聞き返す。話は平行線だったが、ちょっと嬉しかった。60代になって、国家意識に燃える人になっていたが、何も考えないより良いと思った。
女性の何人かが独身だった。一度も結婚しなかった人も2人いた。「男を好きにならなかったの?」と私が尋ねると、「それは違います。巡り合わせがうまくいかなかったんです」と言うので、「そうか、好きになった人は妻子持ちとか」と聞くと、「そんなところです」と答える。「じゃー、全く男を知らない訳ではないんだ」と言うと、「当たり前ですよ」と頬を膨らませる。「結婚だけが幸せの形ではないし、まだこれからだって、いい人との出会いはあるかも知れないし」と私が言うと、「ええ、期待しています」と笑う。
好きな人と結婚したのに、離婚してひとりで生きている女性もいた。あんなにきれいで、未だにスタイルもよく、明るく笑顔が可愛いのに、どうして離婚に至ってしまったのか。4度結婚した男は最初の妻と友だち付き合いしていると言う。どうも私の方が形式にこだわっている。1次会に続いて2次会をパブで開いてくれたが、女性たちも参加し、大いに盛り上がった。さらに男たちは「3次会に行く」と言う。「先生の寿命はこの1年でしたよね」と私のブログを読んでいる男が言う。ああ、だから私よりも先に逝くなよ。