カミさんの弟が満面の笑顔でやって来た。「可愛いよ」と差し出したのは『初孫 誕生』の箱。金粉入りのお酒セットだった。5月5日の子どもの日に因んで、義弟が用意したのだろう。1か月ほど孫と一緒だったから今は寂しいのだろうが、初孫の写真付きのお酒を配る姿はやはり嬉しくって仕方ない様子だった。『初孫』などという名前のお酒があるとは知らなかったが、それを探し出してくる熱意が半端じゃーない。
長女のダンナのお父さんも義弟も、70歳を過ぎて初孫が生まれたから、どんなしぐさも表情も可愛くて仕方ないようだ。孫のためなら何でもしてやりたい、きっとそんな気持ちだろう。「初節句は来年する」と話すが、もうどんな風に祝ってやろうかと考えていることだろう。かなり難産だったが母子ともに健康で、ダンナと子どもと3人での暮らしが始まったと言う。
我が家は女の子ふたりで、生まれた孫は3人とも女の子だから、男の子はどんな風にお祝いするのだろう。私の家にも武者人形はあったが、それは兄の物で、3男の私は他人事のような気がしていた。柏餅やちまきは食べたし、しょうぶ湯にも入ったが、特別に何かすることはなかったように思う。家にあった兄の絵本をよく見ていた。
よく覚えているのは、那須与一が海に浮かぶ船の扇を射る場面である。とても写実的な武者姿だった。もう1つは童話で、題も筋も記憶にないが、日本の昔話ではなかったと思う。若者の肩の上におじいさんが乗り、両足で若者の首を絞めつけるので、命令されるままに歩く話だった。まだ、小学校に上がる前だから文字が読めるはずもなく、誰かに読んでもらったのだろうが、とても怖いと思った。
怖いといえば、倉橋由美子さんの『大人のための残酷童話』がある。童話や昔話をヒントにしたものだが、どの話も本当に怖い。それは大人の中に潜む欲望を見るからなのだろう。今日は「子どもの日」なのに脱線した。