風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

雪のおもいで

2010-02-03 02:33:32 | 日々の生活
 雪は昨晩未明には止んだので、今朝の通勤・通学にはほとんど影響がありませんでしたが、一日経った今も、日陰や路肩や駐車場の隅と言わず、車のフロント・ガラス、更には畑一面にも雪がまだ残っています。今日は、ノスタルジックに雪の思い出の問わず語りです。
 私はつい一年半前まで常夏のマレーシア・ペナンに住んでいましたが、15年前から4年間は、雪国に住んでいました。アメリカ・ボストンのことを雪国と言えば、北海道の人には笑われそうですが、そこは私にとっては紛れもない雪国でした。と言うのも、毎年、感謝祭の頃から翌年の4月頃まで周囲はすっかり雪に覆われますし、ドカ雪に襲われると途端に交通がマヒする首都圏と違って、ボストンでは、仮にドカ雪でも夜間に降る限りは、早朝の間にすっかり雪掻きされて、普通に生活出来るだけのインフラが整っているからです。問題は、雪掻きとともに道路に大量の塩が撒かれることで、マフラーが錆びやすく、2~3年に一回はマフラーに穴が開くかマフラーが落っこちて、突然、暴走族のように爆音を轟かせることになって驚かされます。そのため、街中には至るところにマフラー屋(首に巻くマフラーではなく、消音器、英語でPipeと言います)があり、手軽にマフラー交換できます。
 そんな雪国でも、昼間にSnow Stormに襲われると、雪掻きが追いつかないため、オフィスや学校は早々に閉鎖に追い込まれ、早退することを勧められます。そんな日でもお構いなしに働き者の日本人が遅れて帰る頃には、自分の車がポツリと一台だけ、だだっ広い駐車場に、すっぽり雪に埋もれて取り残されていて、一人寂しく雪掻きするハメになります。酷い時には鍵穴が凍ってキーを差し込めないこともあります。ハンドルは冷たくて素手では握れません。エンジンをかけたままロック・アウトしてしまう不注意もたまに犯してしまいます。ようやく走り始めても、道路には厚い雪が覆いかぶさり、スパイク・タイヤやスタッドレス・タイヤではなく普通のタイヤで、鎖を巻く習慣もありませんから、いくら人通りはないとは言え、時折、ハンドルを取られて雪山に突っ込みながら、恐る恐る運転することにならざるを得ません。そんな日に高速道路を走る場合、更に細心の注意が必要です。高速で走っていて雪山に突っ込んで、一晩見つけられないで凍死する事故が毎年のように起こるからです。そのため、私は車のトランクに毛布と大きめのロウソクを常備していました。
 公道は雪掻きされますが、一軒家の場合は、駐車場から公道までの雪掻きを自分で(あるいは自分が業者に依頼して)行なわなければなりません。私が住んでいたようなタウンハウスやアパートの場合は、駐車場の自分のスペース以外は雪掻きしてくれるので楽チンですが、それでも油断は出来ません。週末、朝寝坊して、車を駐車場から出しておくのをうっかり忘れると、周囲は雪掻きされてキレイになっているのに、自分の車だけ雪に埋もれて取り残されるという事態になりかねないからです。雪掻き用のスコップや、フロントガラスの雪を払う大型ブラシは必携です。
そんなこんなで雪国の車社会は何かと不自由ではありますが、雪にすっぽりと覆われた白銀の世界は、喧騒を吸収して、独特の静けさがあります。冬が長い分、緑が芽吹く春の訪れの喜びはひとしおです。ボストンで生まれた上の子供との穏やかな日々の記憶と相俟って、雪国ボストンでの生活は、今なお懐かしく思い出されます。
コメント
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