風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

市川海老蔵

2010-12-18 00:13:19 | スポーツ・芸能好き
 最近はNHKもワイドショー化したものだと、以前、別のブログに書きました。ワイドショーは一種の井戸端会議と言えましょう。最近は井戸がないので、井戸端会議という言葉も死語で、それがワイドショーだったり、あるいは井戸端の代わりに公園やスタバやホテルの喫茶店や白金台のイタリアンだったりするのは時代の流れで、いずれにしてもゴシップ好きは変らないと言うことです。
 それが民放だけでなくNHKもワイドショー化しているということは、言わば一億総“井戸端会議”化しているとも言え、なんだか最近の日本人の内向きで海外に出たがらない引き篭もり状況を連想させて、やや憂鬱になります。そしてこの一億総“井戸端会議”化がもつ、図式を単純化し平準化し薄っぺらにする圧力のようなものに、やや違和感を覚えずにはいられません。
 最近のワイドショーで最もホットな話題は、表題に書いた市川海老蔵の暴行事件です。天下の(!)NHKも詳細に報じていたのには驚きを禁じえませんでしたが、これもただの芸能界ではなく、伝統芸能の世界だからでしょう。市川海老蔵は、本人に人気があるとか重要な人物だからというわけでは全然なく、ただのスケープゴートとして、NHKが庇護する相撲界と言い、歌舞伎界といい、伝統的に裏の世界との繋がりがある伝統芸能の世界にあって、現代の井戸端会議の格好の標的になっているわけです。
 こうした表と裏の世界は、日本では持ちつ持たれつ、付かず離れずで、社会の陰の部分(金融や娯楽産業など)を構成し、共存してきましたが、他の先進国に倣って、法規制が強まるにつれ、また経済・社会構造が成熟するにつれ、一部は完全に潜伏しつつ、その他のかなりの部分は境界が曖昧になり、表に染み出して表面上は見分けがつかなくなりました。
 現代の井戸端会議は、現代に残された数少ない裏の世界にも容赦なく光を当て、面白おかしく取り上げて、その実、裏の世界との縁を断ち切る一種のキャンペーンのような意図を隠しているように見えますが、結局、裏の世界が完全に潜伏するか表に染み出して見分けがつかなくなるかを推し進めるだけで、人間の心に闇がある限り、また社会を構成する中では光が当たらない闇が出来る限り、簡単に消えてなくなる類いのものではありません。むしろ潔癖さを追求し、正義感ぶって表面を取り繕ってよしとする現代の日本の風潮には、大衆化という一言では片付けられないような、ある種の脆さや危うさを感じてしまいます。
コメント
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