風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

尖閣諸島国有化

2012-09-14 02:40:50 | 時事放談
 一昨日、尖閣諸島国有化のために予備費を拠出することを閣議決定した上で、政府は地権者と尖閣諸島の売買契約を締結しました。石原都知事が仕掛けた東京都による買い取りを、国が引き取ったわけで、筋論でいけばその通りなのですが、石原都知事が仕掛けるまで国は動こうとしなかったこと(国はまるで相手にされていなかったと言うべきかも)、また、石原都知事が意図していたような実効支配は手控える模様であることからすると、ナショナリストの石原さんを表に出さないで国が幕引きを図るという、事勿れ主義の民主党政権の面目躍如で、うんざりします。
 案の定、「購入」は違法で無効だと、中国は猛反発しました。野田首相がウラジオストクで立ち話をした胡錦濤国家主席も、強い反対の意思を表明したそうですが、政権交代(勿論、胡錦濤さんの)の微妙なタイミングであり、今後も影響力を失わないためには、この刹那に妙な妥協は出来ませんから、ポーズだけでも強硬姿勢を貫くしかないのでしょう。
 二週間ほど前の産経新聞オンラインで見かけた、「中国人は竹島を、韓国人は尖閣をどう見る? 意外と多い『日本支持』」と題する桜井紀雄氏の署名入りコラムが面白かったので紹介します。
 先ずは中国のサイトで中国人は竹島の領有をどう見ているか。

(引用)
「百度」のコミュニティーサイトには、竹島問題を主題にしたものもある。書き込みの一つは、「(韓国人は)中国と関係する資料を用いて独島(竹島)が韓国に属していると証明する。つまるところ、自分に都合のいいものを引用するが、朝鮮の宗主国、明朝の海図文献には竹島は日本に属すると記載されている」と指摘した上で、「釣魚島は中国のものだが、独島(竹島)は日本のものだ。恥知らずの韓国人は出ていけ!」と韓国批判と日本支持を打ち出している。これに対して「親日的だ」という批判も書かれるが、それに再反論して「国際法的に言って竹島は日本のものだ」「世界に独島なんてない。あるのは竹島だけだ」というコメントがいくつも続く。こんな書き込みもある。「竹島問題では、8割のネットユーザーが日本を支持する。韓国に声援を送る中国人は1割に過ぎない」
(引用おわり)

 その理由として、「地震で日韓は全く違う態度を取り、中国人の韓国人に対する印象が非常に悪化した。加えて文化衝突や『白頭山』の嘘などでますます多くの中国人が韓国は友好国ではないと感じるようになった」からだと言います。

(引用)
四川地震直後、韓国人がネットに「ざまを見ろ」と書き込んだという話題が中国のネットに広がり、「炎上」したことがあった。反対にいち早く救助隊を送った日本に対しては「謝謝(ありがとう)! 日本」という書き込みが相次いだ。(中略)文化衝突と言っているのは、中国のネットに広がる「韓国人は何でもかんでも韓国発祥だと歴史を歪曲している」という批判を指すものだ。韓国で、漢字や漢方医学、風水思想は「韓国発祥だ」という意見が飛び出すたびにこれが中国のネットで誇張されて伝わり、韓国批判が繰り広げられてきた。「白頭山」は中朝国境にまたがり、朝鮮民族の間で聖なる山とされる存在。中国側では「長白山」と呼び、歴史的背景や“領有権”をめぐって中朝韓で論争が続いている。
(引用おわり)

 他方、韓国のサイトで韓国人は「尖閣諸島」の領有をどう見ているか。

(引用)
韓国最大手の検索サイト「ネイバー」の質問コーナー「知識イン」の書き込みを拾ってみた。韓国で「百度知道」に相当するサイトだ。尖閣問題についての質問に「琉球諸島の住民がここに工場などを建てたこともあった。第二次世界大戦後、米国の施政下に入ったが、1972年に沖縄とともに返還された」という日本側の主張と、「1372年の明朝時代に発見した」などと中国側の言い分を両論併記した答えが多い。「尖閣諸島は現在、日本が実効支配中です。中国領土ではなく、日本の領土です」と日本領であることを断言する書き込みも見られた。韓国が実効支配している竹島は「韓国のものだ」という主張の裏返しのようだ。尖閣問題は「単純に独島問題のような領土紛争ではない」と前置きしつつ、背景に中国側の事情があると指摘する書き込みもある。「日本は最近、中国と紛争を拡大させる理由はなく…」とやや日本の肩を持ちながら、中国はベトナムなど東南アジア各国と領土紛争を抱えており、尖閣でも引くわけにはいかないと解説する内容のものだ。さらには、「中国当局が尖閣と離於(イオ)島は自国領土と記載したとんでもない事実がある。これは歪曲だ」と中国側を非難する声もある。
(引用おわり)

 さて、ここに出て来る離於(イオ)島は、中国で「蘇岩礁」と呼ばれ、東シナ海の中韓の排他的経済水域が重なる海域にあって、厳密には島ではなく、海面下に沈む暗礁ですが、中韓双方がこの海域の主権を主張し、紛争のまっ只中に置かれているのだそうです。
 こうして見ると、日・中・韓の間でそれぞれに領有権問題を抱え、自国がからむ場合には愛国心の発火点となってムキになりやすい一方、自国と関係がないことには意外なほど冷静で多様な判断が働いていることが分かります。とりわけ日本ほどの自由がないと言われる中国で、存外さばけた見方をしていることに驚かされます。ネット社会が浸透しているということでしょうか。恐ろしいのは愛国教育、と、あらためて思います。
コメント
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