風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

参院選(5)遠交近攻

2013-07-20 11:39:52 | 時事放談
 安倍政権が発足して半年が経過しましたが、期待先行でまだ実体に乏しい金融・経済政策(アベノミクス)を批判する声が強いのに対して、外交はスピード感をもって積極的に展開されており、相対的に好感する人が多いように思われます。ただでさえ安倍さんの揚げ足を取ろうと狙っているマスコミを黙らせていると言うべきでしょうか、そのため野党も攻めあぐねて、中・韓との首脳会談が実現せず関係改善が進まないことを責めるのがせいぜいという状況です。橋下発言などに向ける世界の目が厳しいことを察して、一転、右傾化を匂わせる発言を手控え、実務的に粛々と外交を進めていることが功を奏していると言えます。
 その内実は、一つには、外交敗戦と呼ばれた民主党政権と異なり、日米同盟を基軸に据えていること、もう一つには、関係悪化した中・韓をよそに、むしろ両国を牽制するかのように周辺諸国との多角的な戦略外交を進めていることで、中国が伝統的に得意とする「遠交近攻」外交とでも呼ぶべきものです。安倍首相が訪問した国を表示する世界地図を時々見かけますが、ざっとこんな具合いです(http://www.nippon.com/ja/currents/d00089/)。

1月中旬  ベトナム、タイ、インドネシア  ・・・東南アジア重視の「対ASEAN外交5原則」。
2月後半  米国  ・・・日米同盟の再確認、TPP交渉への日本の参加を表明。
3月末   モンゴル  ・・・日本とモンゴルの「戦略的パートナーシップ」確認。
4月末~5月初  ロシア、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、トルコ
        ・・・日本の首相として10年ぶりのロシア公式訪問。「日露パートナーシップの発展に関する共同声明」を採択。
        ・・・中東3カ国とエネルギー・経済協力、安全保障、文化・人的交流などの多層的関係構築で合意。
5月末   ミャンマー  ・・・日本の首相として36年ぶりに公式訪問。両国関係の強化と経済支援で合意。
6月後半  ポーランド、英国、アイルランド
        ・・・「V4+日本」協力10周年で「21世紀に向けた共通の価値に基づくパートナーシップ」の確立で合意

 さらに、その間、フランスとインドの首脳が日本を公式訪問しましたし、外務省HPによると、訪日したパレスチナ自治政府、パラオ、キルギス、ベナン、スロベニア、スリランカ、パプアニューギニア、メキシコ、ラトビア、ブルネイ、シンガポール、タイの各国首脳との会談が行われていますし、更に電話会議まで入れるとキリがありません。
 こうした積極外交は、中国をかなり刺激しているようです。石平さんによると、中国では「政府関係者、マスコミ、学界などが総動員されるような形で、安倍政権の進める国内政策と外交政策のすべてに対し、史上最大の罵倒合戦ともいうべき大掛かりな批判キャンペーンが展開されている」そうです。毎年のように首相が入れ替わる日本の政治状況は、日本の国力衰退の象徴でしたので、国民の支持率が高い安定政権の登場は、中・韓のように日本を敵視する国にとっては喜ばしいことではありません。とりわけ、中国による批判キャンペーンの中で、安倍政権の進める一連の外交活動に対する攻撃が突出しているのだそうです。それは中国の焦りの裏返しのようにも映ります。米中首脳会談もその文脈のもとに中国側から持ちかけられたとの解説があります。ロス郊外が会談場所に選ばれたのは、どうせ訪米されても成果が期待できないオバマ大統領の思惑と、南米歴訪のついでに立ち寄ったことを演出したい習近平国家主席の思惑が一致したからかも知れません。また、ロシアを巡っても、習近平国家主席が、就任後最初の訪問先としてロシアを選んだのは、関係強化に並々ならぬものを感じさせますが、その一か月後の安倍首相の訪ロでは、領土問題解決に向けて交渉再開することが合意されただけでなく、外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)設置が決まったことは、習近平国家主席としては穏やかならざるものを感じていることは間違いありません。
 また、韓国大統領は、先月末、中国を訪問し、習近平国家主席と会談し、蜜月ぶりをアピールしました。なにしろ韓国歴代大統領が、就任後、アメリカ訪問の次に、日本より先に中国を訪問するのは初めてのことでした。しかし、今、韓国には、これまでの日中韓の三国関係から、やや中国に傾きつつある状況を警戒する論調も出始めているようです。
 中・韓とは、外交関係ですので、いずれ時が熟すまで、つかず離れずで、今、無理に仲良くしようと働きかける必要はないように思われます。そういう点でも、対話の窓口は開いておくと明言するだけの安倍さんの姿勢はそつがなく安心感を与えます。
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