風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

教科書検定

2015-04-11 19:20:56 | 時事放談
 教科書検定と言えば、昭和57年6月26日、大手新聞各紙及び各テレビ局が、昭和時代前期の日本軍の行動について、「華北に“侵略”」とあったのを「華北へ“進出”」という表現に書き改めさせられたと報道したことを契機に、中国との間で外交問題に発展した、所謂“第一次教科書検定”を思い出します。日本政府は、同年8月26日、「『歴史教科書』に関する宮澤喜一内閣官房長官談話」を発表し、9月8日に中国側が了承したことで事態は収束しましたが、これによって、教科用図書検定基準の中に所謂“近隣諸国条項”(近隣のアジア諸国との間の近現代の歴史的事象の扱いに国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がされていること)が追加されるという禍根を残し、以来、教科書に所謂“自虐史観”的な記述が続くことになりました。後に、各紙・各局の報道が誤報だったことが判明し、渡部昇一さん論文(文藝春秋のオピニオン誌「諸君!」掲載「萬犬虚に吼えた教科書問題」)をたまたま読んだ私は、ただの誤報が外交問題に発展したこともさることながら、誤報が屈辱的な近隣諸国条項を呑まされることに繋がったことに愕然とし、爾来、朝日新聞と決別し、「諸君!」は保守色が強いながらも、それ故にこそやや左に偏向した新聞の解毒剤として時々購読するようになったものでした。
 そんな教科書編集の指針となる検定基準が改正され、近現代史の出来事で通説的な見解が存在しない場合には、その旨を明示する、政府の統一的な見解があれば、それに基づいて記述する、見解が分かれる事柄はバランスよく取り上げる、といったことが求められるようになって、初めての検定があり、これまでは竹島や尖閣諸島について「日本固有の領土」とはっきり書かない教科書があったのに対して、来年4月から使われる中学校教科書では、社会科では初めて地理、歴史、公民の全教科書が竹島と尖閣諸島を取り上げるなど日本の領土に関する記述が大幅に増え、竹島は「韓国が不法占拠」、尖閣諸島は「日本固有の領土」と強調するなど、ようやく次代の日本を担う子供たちに向けて、自国の立場を理解することが出来るようになったという、まともな内容に改められました。
 これについて、朝日新聞の7日付の社説がふるっていました。領土問題について、「『日本固有の領土』『竹島を韓国が不法に占拠している』など編集の指針をなぞる社が多い。相手国の主張や根拠まで扱った本はほとんどない。これでは、なぜ争っているか生徒にはわからない。双方の言い分を知らなくては、中韓やロシアとの間で何が解決に必要かを考えるのは難しいだろう」と。
 まさか、主権に関わり、解決の糸口が見えず、双方の主張が平行線を辿るばかりの領土問題で、教科書を読む子供たちに解決を考えさせるわけではないですね。そんなことをしても答えが出るわけがありません。それだけでなく、「中国」の歴史上、王朝が交替してきたと言っても、中原という舞台を巡って異民族が興亡を繰り返してきただけのことで、そのたびに人民を虐殺して人口が激減し、焚書坑儒のように前王朝の文化や歴史を抹殺し、自分たちの歴史を捏造して塗り替える、およそ「中国」という国家としてのアイデンティティが受け継がれたわけではなく、ブツ切りで、「中国4000年の歴史」は単なる虚構でしかないのは自明のことであり、今の中華人民共和国の建国は1949年でしかないのに、版図が最も大きかった清の時代にまで遡って領土主権を主張する盗人猛々しい主張を載せて、どうしようと言うのでしょうか。
 これまで私もブログで何度か引用してきましたが、スタンフォード大学の研究グループが10数年前、米・日・中・台・韓各国の歴史教科書を比較研究して得た結論・・・日本では歴史は「ヒストリー」だが、中国では「プロパガンダ」、韓国では「ファンタジー」・・・を知らないわけではないでしょう。因みに、それを報じた当時の読売新聞によると、

 日本の教科書は最も愛国的記述がなく、非常に平板なスタイルでの事実の羅列で感情的なものがない。
 中国の教科書は全くのプロパガンダで、共産党のイデオロギーに満ちている。04年に改訂されたが、改訂後は中国人の愛国心をうたい、抗日戦争での勇ましい描写が増えた。南京事件を詳細に記述するなど、日本軍による残虐行為をより強調し、中国人のナショナリズムをあおっている。
 韓国の教科書は特にナショナル・アイデンティティーの形成に強く焦点を当てており、自分たち韓国人に起こったことを詳細かつ念入りに記述している。日本が自分たちに行ったことだけに関心があり、広島・長崎への原爆投下の記述すらない。それほどまでに自己中心的にしか歴史を見ていない-。(八木秀次氏「日中韓で異なり過ぎる歴史観」2013.09.26 夕刊フジ)

 同じキリスト教文化圏にあって、歴史を「ヒストリー」と呼べるドイツとフランスでも、歴史認識の摺合せは難しく、結局、両論併記になったこともまた、以前、ブログで触れました。再び、朝日新聞の社説を引用しますが、なかなかふるっています。「社会科の教科書は、国が自分の言い分を正解として教え込む道具ではない」と。産経新聞の阿比留瑠比氏は「教科書は、日教組の機関紙であってはならない」と揶揄していました。日本人である以上、日本国の歴史認識を示すのは当然のことであって、中国の「プロパガンダ」や韓国の「ファンタジー」に付き合う必要はないと思うのですが、朝日新聞はどんな日本人を作りたいのでしょうか。「国際人」なる意味不明、あるいはルーピー鳩山さんのように国家を超越した「宇宙人」を作りたいわけではないでしょう。国際社会場裏では、国あるいは民族を背負わない人はいないという現実を、まさか朝日新聞は知らないわけはないと思うのですが。
コメント
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