風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

夢想する中国

2015-04-28 00:22:57 | 時事放談
 前回、東シナ海より南シナ海、南シナ海より西方、という話をしました。東シナ海では尖閣諸島周辺で安定して(!?)中国公船による領海侵犯があり、さらに南シナ海では単なる岩を島に、さらには滑走路に変えてしまう身勝手な埋め立てに、アメリカはじめ関係国は神経を尖らせています。そして西方では、チベットや新疆ウィグルなどの少数民族問題があるのは周知の通りですが、新疆ウィグル自治区のイスラム教徒がISIL(あるいはISIS)で訓練を受けているらしく、上海協力機構は、そんなイスラム教徒対策のため、ロシアやインドを巻き込み、中央アジア版NATOを結成しようとするものだと解説する人もいます。
 軍の思惑があるという意味では、中国国内の鉄道プロジェクトは、明らかに中国人民解放軍の軍事戦略の下に発想されており、兵力、兵站、装備、戦車輸送などの基幹ルートでもある、と米国の有力シンクタンク「ジェイムズタウン財団」のレポートは伝えているそうです。
 そのあたりは、かれこれ半世紀前のことになりますが、1956年、アメリカが州間高速道路網の建設に着手したのは軍事的な理由があったことを彷彿とさせます。アイゼンハワーは、その昔、下級将校だった時分、陸軍の輸送トラック部隊を率いてアメリカ大陸を横断した際、悪路のため数ヶ月もかかってしまったのに対し、第二次世界大戦でドイツは、バルジの戦い(1944年12月)を開始するために、アウトバーンを使って軍隊を東部前線から西方へ移動させるのを目の当たりにし、愕然としたといいます(このあたりは、ジョージ・フリードマン著「100年予測」より)。
 そればかりではなく、AIIBを通じた融資によって、アジア各国との国境を越えた新幹線や高速道路、そして海のシルクロードは港湾の建設プロジェクトが主眼となることが明らかになりましたが、こうして中国が華々しくぶち上げた陸と海の「21世紀のシルクロード構想」は、どうやら軍の戦略が基本にあり、如何にして軍事力を迅速かつ効率的に輸送できるかに力点が置かれているとの解説があるようです。一つは、国内の高速鉄道(所謂新幹線)を、カザフスタン、ウズベキスタンなど中央アジア・イスラム圏を通過させ、トルクメニスタンを通過してヨーロッパへ向かわせるものであり、また、トルコへは既にイスタンブール~アンカラ間を中国が支援した高速道路が完成しており、これをトルコはさらに四本、東方へ連結する計画があるそうですし、アジアへも、雲南省からラオス、カンボジア、ベトナムへ鉄道を拡充して結ぼうとしているというわけです(このあたりは宮崎正弘氏による)。
 そのあたりは、かれこれ100年前になりますが、日本による日露戦争の開戦が、ロシアによるシベリア鉄道建設による輸送能力向上との時間との勝負だったことを、やはり彷彿とさせます。
 どこまでが本当なのか、俄かには信じ難いと思う反面、「中華民族の偉大なる復興」を掲げ、実に1840年のアヘン戦争以来の歴史の屈辱を雪ごうとする習近平国家主席の底知れぬ恐ろしさをも感じさせます。
コメント
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