それにしても、なんとお粗末な論議かと、多くの国民が思っていることでしょう。読売新聞が6月5~7日に実施した全国調査によると、政府・与党が法案の内容を十分に説明していないと思う人は80%に達し、今年4月時点の調査(3~5日)の81%と、ほぼ変化はないそうです。民主党の岡田代表は「国会でのやりとりを見る限り、(政府から)誠意をもって国民の皆さんに理解してもらおうという気迫は感じられない」(31日)と言われたことが伝えられますが、他人事のように言うのは許せない。この国会論戦の貧しさの多くは、間違いなく野党の質問が悪過ぎるせいだからです。もうちょっと付言すると、そんな貧しい国会論戦を見越して、所詮、国会を乗り切るための論議と割り切る政府の心掛けも悪い、と言えなくもありません。いずれにしても野党が情けないのであって、野党は大いに反省して欲しい。
このモヤモヤした気持ちはどこから来るかというと、自衛官のリスクが高まるのではないか?などという頓珍漢な質問に象徴されるような道徳論が、国会という最高権力の場で跋扈すること、そして自衛隊法などの改正案10本を束ねた「平和安全法制整備法」と新たに制定する「国際平和支援法」の2法案・・・つまり法律論に堕していて、一般国民には現実的な意味合いがなかなか理解できないもどかしさにあります。自衛官といっても22万5千人、いろいろな方がいらっしゃるでしょうから、一口にどうとは言い切れませんが、東日本大震災のときの活躍を思い出すまでもなく、国のために命を張って、日夜、緊張の中に生きておられる方が大多数であろうという印象をもっていますし、実際に最近、元一等陸佐の方から聞いた話では、そもそも自衛隊はリスクに晒される組織であると(当たり前のことですが)明言されただけでなく、我が国の主体的な目的があって、崇高な使命のためなら喜んで戦う(が、アメリカから言われたから、とか、日米安保のために、というのはやめて欲しい)と言われていました。まさにその通りだろうと、平和ボケした私でも思います。それなのに、当の自民党は、「安全が確保されているところで活動するのは当然だ」と安倍首相自身が答弁し、「自衛隊のリスクは増えることはない」と中谷防衛大臣も述べて、まともに質問に答えませんでした。感情論や心情論がメディアを占拠している現状を懸念しているのでしょうが、これでは国会を乗り切るための議論と非難されても仕方ありませんね。
結局、日本人は相も変らぬ「戦後」思考から抜け切れていないのではないか。その後、冷戦が始まっても、その地理上の戦略的重要性から、アメリカに軍事基地を提供するだけで価値があって、日本自体は何も思考することがありませんでしたし、冷戦が終わって、戦略環境はさらに変化して、欧州ではいろいろな議論があったのに、日本ではやはり思考することはありませんでした。こともあろうに保守を自任してきた元自民党の重鎮?が、今頃のこのこ日本記者クラブに出て来て記者会見して、一国平和主義を開陳される始末なのです。日本は専守防衛を貫いたから世界から信頼を得たが、このままでは外国の戦争に巻き込まれる、との懸念を示したそうですが、これは戦後リベラルあるいは強い日本を望まない(端的に日本の孤立化を謀る)中・韓の議論に与することはあっても(だからと言って中国に買収されているとまでは言いませんが・・・本当は言いたいけど)、日米安保があったからこそ平和と安定が維持出来たとする現実主義的な見方とは相容れませんし、地域の安定を望むフィリピンやベトナムなどのアジア諸国の声には耳を塞いでいます。衆院憲法審査会で、自民党が推薦した学者を含む参考人全員が、安保法案を「憲法違反」と断じたことが波紋を広げていますが、今回の参考人選定は自民党憲法調査会の幹事・船田元氏が内閣法制局に人選を頼んだという経緯からして、内閣法制局の単なる仕返しだったと見て間違いありません。
日本人として・・・と言うより、一企業人として、まず日本の安全保障環境をどう認識すべきなのか(企業が事業環境を認識するところから始めるのは当然のことです)、その中で、日本は何を目指して(これは国柄の議論かも知れません、企業にもビジョンが必要なのは当然のことです)、どのような戦略を描いているのかを知りたいと、素朴に思います。最悪に備えて、最善を求めるのは、企業としては当然のことです。環境が変わったというのは、軍隊の役割が、冷戦後、間違いなく変わったと言い換えてもよいでしょう。専守防衛を旨とする日本国として、攻撃・防護に備えるのは大事ですが、グローバル化した現代にあっては、国際システムの安定化にどう寄与していくのか、そこまで実力が伴わないならば、せめて日本が密接な関わりをもつ東アジアや東南アジアの地域システム安定化をどう担保するのか、主体的に考えて然るべき、経済規模がある地域大国だと思います。それなのに、一国平和主義を今なお求めるとすれば、現代にあっては、鎖国の発想と断罪すべきではないでしょうか。
その意味で、保守陣営にも70年談話は必要ないという声を聞きますが、やはり、日本国のありようを、そもそも争いを望まない平和でお人好しの日本人が直面する厳しい東アジア環境を見据えて、日本が目指すものは何で、そのためにやむを得ず備えをしなければならない現実を、安倍首相にはしかと示して頂きたいと思います。
このモヤモヤした気持ちはどこから来るかというと、自衛官のリスクが高まるのではないか?などという頓珍漢な質問に象徴されるような道徳論が、国会という最高権力の場で跋扈すること、そして自衛隊法などの改正案10本を束ねた「平和安全法制整備法」と新たに制定する「国際平和支援法」の2法案・・・つまり法律論に堕していて、一般国民には現実的な意味合いがなかなか理解できないもどかしさにあります。自衛官といっても22万5千人、いろいろな方がいらっしゃるでしょうから、一口にどうとは言い切れませんが、東日本大震災のときの活躍を思い出すまでもなく、国のために命を張って、日夜、緊張の中に生きておられる方が大多数であろうという印象をもっていますし、実際に最近、元一等陸佐の方から聞いた話では、そもそも自衛隊はリスクに晒される組織であると(当たり前のことですが)明言されただけでなく、我が国の主体的な目的があって、崇高な使命のためなら喜んで戦う(が、アメリカから言われたから、とか、日米安保のために、というのはやめて欲しい)と言われていました。まさにその通りだろうと、平和ボケした私でも思います。それなのに、当の自民党は、「安全が確保されているところで活動するのは当然だ」と安倍首相自身が答弁し、「自衛隊のリスクは増えることはない」と中谷防衛大臣も述べて、まともに質問に答えませんでした。感情論や心情論がメディアを占拠している現状を懸念しているのでしょうが、これでは国会を乗り切るための議論と非難されても仕方ありませんね。
結局、日本人は相も変らぬ「戦後」思考から抜け切れていないのではないか。その後、冷戦が始まっても、その地理上の戦略的重要性から、アメリカに軍事基地を提供するだけで価値があって、日本自体は何も思考することがありませんでしたし、冷戦が終わって、戦略環境はさらに変化して、欧州ではいろいろな議論があったのに、日本ではやはり思考することはありませんでした。こともあろうに保守を自任してきた元自民党の重鎮?が、今頃のこのこ日本記者クラブに出て来て記者会見して、一国平和主義を開陳される始末なのです。日本は専守防衛を貫いたから世界から信頼を得たが、このままでは外国の戦争に巻き込まれる、との懸念を示したそうですが、これは戦後リベラルあるいは強い日本を望まない(端的に日本の孤立化を謀る)中・韓の議論に与することはあっても(だからと言って中国に買収されているとまでは言いませんが・・・本当は言いたいけど)、日米安保があったからこそ平和と安定が維持出来たとする現実主義的な見方とは相容れませんし、地域の安定を望むフィリピンやベトナムなどのアジア諸国の声には耳を塞いでいます。衆院憲法審査会で、自民党が推薦した学者を含む参考人全員が、安保法案を「憲法違反」と断じたことが波紋を広げていますが、今回の参考人選定は自民党憲法調査会の幹事・船田元氏が内閣法制局に人選を頼んだという経緯からして、内閣法制局の単なる仕返しだったと見て間違いありません。
日本人として・・・と言うより、一企業人として、まず日本の安全保障環境をどう認識すべきなのか(企業が事業環境を認識するところから始めるのは当然のことです)、その中で、日本は何を目指して(これは国柄の議論かも知れません、企業にもビジョンが必要なのは当然のことです)、どのような戦略を描いているのかを知りたいと、素朴に思います。最悪に備えて、最善を求めるのは、企業としては当然のことです。環境が変わったというのは、軍隊の役割が、冷戦後、間違いなく変わったと言い換えてもよいでしょう。専守防衛を旨とする日本国として、攻撃・防護に備えるのは大事ですが、グローバル化した現代にあっては、国際システムの安定化にどう寄与していくのか、そこまで実力が伴わないならば、せめて日本が密接な関わりをもつ東アジアや東南アジアの地域システム安定化をどう担保するのか、主体的に考えて然るべき、経済規模がある地域大国だと思います。それなのに、一国平和主義を今なお求めるとすれば、現代にあっては、鎖国の発想と断罪すべきではないでしょうか。
その意味で、保守陣営にも70年談話は必要ないという声を聞きますが、やはり、日本国のありようを、そもそも争いを望まない平和でお人好しの日本人が直面する厳しい東アジア環境を見据えて、日本が目指すものは何で、そのためにやむを得ず備えをしなければならない現実を、安倍首相にはしかと示して頂きたいと思います。