日経夕刊によると、日本政府観光局(JNTO)が発表した2015年の訪日外国人客数(推計値)は前年より47%多い1973万人となり、過去最高を記録したようだ。同じく観光庁が発表した2015年の訪日客の旅行消費額も同70%増の3兆4771億円で過去最高となったようだ。菅官房長官は、ビザ発給要件緩和など規制改革の成功事例だと自慢したらしいが、日本人の出国者数は4%減の1621万人と45年振りに訪日客数を下回ったらしいから、円安の影響も大きそうだ。
少子高齢化と人口減少に見舞われ、移民受け入れも容易ではない単一民族国家の日本で、外国人観光客は国内でお金を落としてくれて、GDP成長に貢献してくれる貴重な存在だ。しかし、その1/4を占める中国人の悪態は想像を絶する。札幌のコンビニで、中国人夫婦が会計前のアイスクリームを食べたことを店員に注意されたことに腹を立てて、店員に殴る蹴るの暴行を加えて傷害容疑で逮捕されたことがあった。店内で、床に唾を吐く、並ばない、大声で騒ぐ、陳列商品を触ったり、粗雑に扱ったりする、といったあたりはもはや当たり前の光景だし、旅行中の中国人が交番を訪れ、カメラやタブレット型端末などの高価な機器を「落とした」「スリなど盗難被害にあったかも」などと言って、日本人の遺失物届けでは拾得者が現れて落とし物が見つかることが多いのに、中国人の遺失物の拾得例はほぼゼロという極めて訝しい届け出が相次いでいるらしい。ホテルでは、仲間の客室に集まってドアを開けっ放しにしたままドンチャン騒ぎし、禁煙の部屋で喫煙して調度品を汚し、バッフェ(所謂バイキング)形式のレストランで食べ切れないほどの料理を取って大量に残し、結果、中国人客が多数宿泊するとの情報が流れると、日本人客から予約がキャンセルされることもあるらしい。眉を顰めるのは日本人だけではない。京都を訪れる欧米人は「まるで上海だ」と京都の訪問予定を短縮して、奈良に移動して日本の風情を楽しむといったケースが少なくないらしいし、余りの騒々しさに、台湾人観光客は日本滞在中、中国人に間違われるのが嫌で“無言の行”を貫くケースが相次いでいるという。極め付けは京都の公衆トイレだ。便座に足を乗せて用を足す、便器の外に“誤爆”する、トイレットペーパーを水に流さずゴミ箱に捨てる、お陰で便座は土足で汚れ、個室内は凄まじい異臭を放ち・・・ちょっと想像したくない。
勿論、バブルの頃の日本人もお騒がせだった。パリのシャンゼリゼ通りを闊歩し、本来、ヨーロッパのホンモノのお金持ちが所有するようなヴィトンのバッグを、年端も行かない日本人の女の子が、よりによってジーパン姿でずけずけと上がり込んで買い漁り、良識あるフランス人の顰蹙を買ったものだった。私だって、海外出張したての頃、若気の至りで、ダンヒルのネクタイを締め、ジバンシーの財布やカルティエの定期入れを持ち歩き、アラミス900(オーデコロン)をぷんぷん臭わせて、金満大国日本の象徴のようで、今思えば噴飯モノであるが、お行儀は悪くなかったから、先の中国人とは比較にならないし、まだカワイイものだと思う。
元ゴールドマン・サックスのアナリストで、今は国宝・重要文化財の補修を手掛けて300年余りの小西美術工藝社の代表取締役社長を務めるデービッド・アトキンソン氏は、外国人観光客を「短期移民」と呼ぶ。なるほど、これなら日本人にも受け入れられやすい。彼の書いた「新・観光立国論」(東洋経済)を読むと、アナリスト出身らしく具体的な数字を挙げながら日本はまだまだ「観光後進国」とも言う。例えば、世界銀行の2013年データによると、フランスを訪問した観光客数は8473万人(同国の人口は6611万人だから、人口以上の訪問者があったことになる)であり、2位のアメリカは6977万人、スペイン6066万人、中国5569万人、イタリア4770万人、トルコ3780万人、ドイツですら3155万人、イギリス3117万人、ロシア3079万人、10位のタイ2655万人と続く。GDPに占める観光収入の割合は、フランス2.3%、アメリカ1.2%、スペインに至っては4.8%もあるのに、日本は2015年度の数字を使っても0.8%未満で、世界第三の経済大国だから低いのは当然にしても低過ぎる。
そしてアトキンソン氏は、星野リゾートが観光大国の三条件として挙げる「国の知名度」、「交通アクセス」、「治安の良さ」を的外れだとこき下ろし、仮に便利であっても、見るべきもの、楽しむものがなければ、人はやって来ないものだと言うのは正論だ。実際にアメリカの全国紙「USA Today」は、日本の5つの魅力として、「歴史的名所」(姫路城、熊本城、日光東照宮)、「京都の寺社」(清水寺、三十三間堂)、「伝統体験」(旅館、お茶、相撲)、「食事」、「自然(スキー、沖縄、富士山)」を挙げ、アトキンソン氏も一般に観光立国の条件として「気候」「自然」「文化」「食事」の4つを挙げているが、外国人の異国体験とはそういうものだろう(先の三条件は、日本人が良かれと考えるそれに過ぎないのだろう)。
とりわけアトキンソン氏は、日本に高級ホテルが不足していることに着目する。高級ホテルと言っても、私たち庶民が想像するような一泊数十万円レベルを言うのではない。世界で高級ホテルと言えば一泊数百万(400万~900万円の価格帯)のことを言うのだそうである。それは極端にしても、アラブの富豪や欧米のセレブに超高級ホテルに長期滞在してもらって、たんまりお金を落としてもらった方が、わが物顔の中国人の爆買に付き合わされるより、余程、日本人として心の平穏や日本の品位が保てて、日本の景観にも日本人の気質にもマッチするのではないか。これからの観光立国・日本のありようとして、思わず膝を叩いたのであった。
少子高齢化と人口減少に見舞われ、移民受け入れも容易ではない単一民族国家の日本で、外国人観光客は国内でお金を落としてくれて、GDP成長に貢献してくれる貴重な存在だ。しかし、その1/4を占める中国人の悪態は想像を絶する。札幌のコンビニで、中国人夫婦が会計前のアイスクリームを食べたことを店員に注意されたことに腹を立てて、店員に殴る蹴るの暴行を加えて傷害容疑で逮捕されたことがあった。店内で、床に唾を吐く、並ばない、大声で騒ぐ、陳列商品を触ったり、粗雑に扱ったりする、といったあたりはもはや当たり前の光景だし、旅行中の中国人が交番を訪れ、カメラやタブレット型端末などの高価な機器を「落とした」「スリなど盗難被害にあったかも」などと言って、日本人の遺失物届けでは拾得者が現れて落とし物が見つかることが多いのに、中国人の遺失物の拾得例はほぼゼロという極めて訝しい届け出が相次いでいるらしい。ホテルでは、仲間の客室に集まってドアを開けっ放しにしたままドンチャン騒ぎし、禁煙の部屋で喫煙して調度品を汚し、バッフェ(所謂バイキング)形式のレストランで食べ切れないほどの料理を取って大量に残し、結果、中国人客が多数宿泊するとの情報が流れると、日本人客から予約がキャンセルされることもあるらしい。眉を顰めるのは日本人だけではない。京都を訪れる欧米人は「まるで上海だ」と京都の訪問予定を短縮して、奈良に移動して日本の風情を楽しむといったケースが少なくないらしいし、余りの騒々しさに、台湾人観光客は日本滞在中、中国人に間違われるのが嫌で“無言の行”を貫くケースが相次いでいるという。極め付けは京都の公衆トイレだ。便座に足を乗せて用を足す、便器の外に“誤爆”する、トイレットペーパーを水に流さずゴミ箱に捨てる、お陰で便座は土足で汚れ、個室内は凄まじい異臭を放ち・・・ちょっと想像したくない。
勿論、バブルの頃の日本人もお騒がせだった。パリのシャンゼリゼ通りを闊歩し、本来、ヨーロッパのホンモノのお金持ちが所有するようなヴィトンのバッグを、年端も行かない日本人の女の子が、よりによってジーパン姿でずけずけと上がり込んで買い漁り、良識あるフランス人の顰蹙を買ったものだった。私だって、海外出張したての頃、若気の至りで、ダンヒルのネクタイを締め、ジバンシーの財布やカルティエの定期入れを持ち歩き、アラミス900(オーデコロン)をぷんぷん臭わせて、金満大国日本の象徴のようで、今思えば噴飯モノであるが、お行儀は悪くなかったから、先の中国人とは比較にならないし、まだカワイイものだと思う。
元ゴールドマン・サックスのアナリストで、今は国宝・重要文化財の補修を手掛けて300年余りの小西美術工藝社の代表取締役社長を務めるデービッド・アトキンソン氏は、外国人観光客を「短期移民」と呼ぶ。なるほど、これなら日本人にも受け入れられやすい。彼の書いた「新・観光立国論」(東洋経済)を読むと、アナリスト出身らしく具体的な数字を挙げながら日本はまだまだ「観光後進国」とも言う。例えば、世界銀行の2013年データによると、フランスを訪問した観光客数は8473万人(同国の人口は6611万人だから、人口以上の訪問者があったことになる)であり、2位のアメリカは6977万人、スペイン6066万人、中国5569万人、イタリア4770万人、トルコ3780万人、ドイツですら3155万人、イギリス3117万人、ロシア3079万人、10位のタイ2655万人と続く。GDPに占める観光収入の割合は、フランス2.3%、アメリカ1.2%、スペインに至っては4.8%もあるのに、日本は2015年度の数字を使っても0.8%未満で、世界第三の経済大国だから低いのは当然にしても低過ぎる。
そしてアトキンソン氏は、星野リゾートが観光大国の三条件として挙げる「国の知名度」、「交通アクセス」、「治安の良さ」を的外れだとこき下ろし、仮に便利であっても、見るべきもの、楽しむものがなければ、人はやって来ないものだと言うのは正論だ。実際にアメリカの全国紙「USA Today」は、日本の5つの魅力として、「歴史的名所」(姫路城、熊本城、日光東照宮)、「京都の寺社」(清水寺、三十三間堂)、「伝統体験」(旅館、お茶、相撲)、「食事」、「自然(スキー、沖縄、富士山)」を挙げ、アトキンソン氏も一般に観光立国の条件として「気候」「自然」「文化」「食事」の4つを挙げているが、外国人の異国体験とはそういうものだろう(先の三条件は、日本人が良かれと考えるそれに過ぎないのだろう)。
とりわけアトキンソン氏は、日本に高級ホテルが不足していることに着目する。高級ホテルと言っても、私たち庶民が想像するような一泊数十万円レベルを言うのではない。世界で高級ホテルと言えば一泊数百万(400万~900万円の価格帯)のことを言うのだそうである。それは極端にしても、アラブの富豪や欧米のセレブに超高級ホテルに長期滞在してもらって、たんまりお金を落としてもらった方が、わが物顔の中国人の爆買に付き合わされるより、余程、日本人として心の平穏や日本の品位が保てて、日本の景観にも日本人の気質にもマッチするのではないか。これからの観光立国・日本のありようとして、思わず膝を叩いたのであった。