風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

政治家を嵌めるには

2016-01-30 23:21:17 | 時事放談
 甘利明経済再生担当が、週間文春(1月21日号)が報じた本人と秘書の金銭授受を認め、辞任した。その日の夜、たまたま報道ステーションを見るとはなしに見ていたところ、MCの古館さんが鬼の首を取ったような“したり顔”で、政治とカネの問題を論じて、見るに堪えなかった。しかし私は、どうにも胡散臭さが感じられて、腑に落ちないので、今回は敢えて差し障りのあることを書く。その違和感にはいろいろある。
 先ず、UR(独立行政法人都市再生機構)の道路用地買収に関して「口利き」を行い、業者から多額の金品を受領したということだが、これだけ政治資金規制が厳しいご時勢で、甘利さんほどのベテラン議員が、今どきこれほど絵に描いたような古典的な「口利き・あっせん利得」で引っかかるとは、とても思えないからだ。しかも状況証拠が揃っていて用意周到でもある。「あっせん利得処罰法」は、国会議員等の政治家が、行政機関等に「口利き」をして金品を受け取る行為を処罰する法律で、政治家と行政との腐敗の象徴としてかねてから批判されてきたもので、事実だとすれば、ともかく悪いことは悪いのだが。
 そしてこれをきっかけに、普段は何をやっているのかよく分からない野党議員が、ここぞとばかりに腕まくりして責任追及に名乗りを上げているのもまた片腹痛い。政治とカネの問題も重要だが、もっと他にやることがあるだろうと言いたくなる。
 更に週刊誌の中ではどちらかと言うと信用して来た方の部類に入る週刊文春に、今回ばかりは商業ジャーナリズムのはしたなさを感じてしまう。かつて文春の記者として働き、今は某大学教授の椅子におさまる人が、当時を振り返って「毎週、人気投票されているようなものだった」、「どうせ三日で店頭からなくなるのだから、好きなように書け(つまり、売れるものを書け)と言われたものだ」と冗談交じりに語ったものだった。自由な市場経済の宿命であろうが、なんぼなんでもジャーナリズムのモラルもあろう。
 当初、TPPの最大の功労者と言える甘利氏の足を引っ張るヤカラ(例えばTPPで立場が不利になると言われる関係者など)のせいかと疑った。それにしてはタイミングがいまひとつ。そうしたら実は今回は筋が悪い話なのだと人づてに聞いた。告発した人は初めから脅迫目的で近づき、贈賄と収賄の時効の差(3年と5年)を利用して贈賄の時効成立後に実際に脅迫し、甘利氏側が応じなかったものだから、脅迫した通りに週刊誌にバラしたのだというのである。どうせ私が入手する情報だから、通常はロクなものではないのだが、今回ばかりは信憑性が高い。もしそうだとすると完全に嵌められたことになる。とは言え、甘利氏側(特に秘書)の脇が甘かったのは間違いない。
 贈賄より収賄の時効が長いのは、時代劇によく見られるように、政治家や役人が口利きやあっせんの見返りに金品を要求するケースが多いからであろう。そして、時代劇で「おぬしも悪よのう」などと言われ、政治家や役人とつるむ商人がいるように、少し前までは、民衆の側にも政治家や役人や更には町の顔役などを頼む習性がごく普通にあったのもまた事実である。しかし、報道ステーションのMCの論理では、権力は常に悪、民衆は常に弱くて善、といった単純な図式がビルトインされていて疑う余地はないのであろう。今回はいつもの時代劇とは逆のパターンだが、さて、現代の当山の金さんは現れないものか。
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