風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

欧州紀行(中)イスタンブール

2012-07-25 23:27:08 | 永遠の旅人
 欧州紀行の続きです。
 ロンドンの後、トルコのイスタンブールに行きました。時差2時間、移動時間は4時間弱、欧州出張と言いながら、ここはもはや欧州ではなく、外務省は中東に区分しています。その外務省は、過去一年間、トルコでテロ事件が発生したことに伴い三回、地震発生で一回、性犯罪で一回の注意喚起を外務省ホームページにアップしており、今もなお、イラクとの国境付近は「渡航の是非を検討」するように促し、イスタンブールその他の地域でも「十分に注意」するように呼びかけている、そんな現実を抱えた国です。
 勿論、私にとっては初めての中東ですが、マレーシアで身近にムスリムに接し、日に五度、コーランを読む低い声を聞くとはなしに聞いていた私には、それほど違和感はありませんでした。むしろ、街並みも人々も、これが中東なのかと言われるとどうも典型的な中東ではなさそうであり、ではアジアかと言うと私の知っているアジアとは言い切れない、欧州のようでいて欧州でもない、そんな三つの地域の境界上の、どの地域とも言えるようでそのどれでもない不思議な無国籍な雰囲気を醸し出していることを、やや意外に感じました。
 実は、子供の頃、「飛んでイスタ~ンブ~ル~」と歌われのをよく聞いて、その(庄野真代さんだったと思いますが)歌声が耳に残る私は、その異国情緒を秘かに期待していたのです。古代のビザンティオンであり、コンスタンティノープルであって、かつてのローマ帝国や東ローマ帝国さらにはオスマン帝国の首都が置かれ、世界遺産に指定されている街です。実際に、図鑑でしか見たことがない赤いトルコの国旗がはためく姿を認めると、さすがにここまで来たのかという感動を覚えました。ところがどうしたことか(却ってその歴史的に世界性があったせいか)、確かにイスタンブールにいるはずなのに、一体、今、自分はどこにいるのか、時々、喪失感に見舞われ、戸惑いました。
 ただ、それはタクシーで街を通り抜けて遠目に眺めた軽い印象に過ぎず、ロンドンでもそうでしたが、いまどきの出張は、空港とホテルとオフィスをタクシーで移動するだけで、その土地の空気を存分に吸えるわけではありませんので、殆ど印象に残るような出来事も関心事もなかったと白状すべきかも知れません。
 唯一、街を歩いたのは、現地の人と一緒に昼食にケバブを食べに行った時でした(上の写真)。折しもラマダン(断食月)の前日で、お天道様がある内に食事が出来る最後の日だったのですが、彼らにとっては淡々と過ごす重要な恒例行事の一つに過ぎず、とりたてて感慨深いわけではなさそうでした。ケバブそのものは、くどいくらいに濃い味付けですが、レタスと玉ねぎの千切りが添えられて、ナンに似たパンに一緒に包んで食べると、まろやかになって美味くなるのは、なんとなくアジア的です。食後に飲んだ紅茶は、チャーイと呼ばれ、普通なら渋みが出る前に茶葉を取り出すものですが、ここではお構いなく、濃く煮出していて、砂糖を入れて多少は渋みをまろやかにして飲むものだそうです(話によると、好みに応じてお湯で薄めることもあるらしい)。もう少し滞在して、世界三大料理と呼ばれるトルコ料理を味わってみたいと思いました。
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