風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

ガラパゴス中国

2016-11-05 20:24:55 | 時事放談
 前回ブログで触れなかったが、この内容は、この夏、経産省内に対内直接投資案件を安全保障の観点から審査する組織が出来たことと、Newsweek日本版9・13号の記事が背景にある。
 とりわけNewsweek日本版9・13号は興味深かった。特集タイトルは「中国経済」、サブタイトルは「進化する企業と停滞する国家」とある。ガラパゴス化と言えば、日本のように孤立した固有の生態系の中で、i-modeをはじめとする携帯電話など特異な進化を遂げ、最適化し過ぎて、世界標準から懸け離れてしまった製品や技術を揶揄して形容された言葉だが、中国も同様ではないかと言う。
 先ずは「中国当局は、経済ナショナリズムと体制崩壊への危機感から、公式・非公式の保護政策によって欧米IT企業を排除し、中国という巨大な成長市場を自国企業に独占させてきた」(Newsweek)。「最も露骨な保護措置は、市場参入を拒否することだ。ソーシャルメディア大手のフェイスブックとツイッターは、中国共産党から現体制への脅威と見なされ中国への進出を認められなかった」(同)。「もう一つの『規制型障壁』は、中国で事業を行う外国企業に対し、中国国内にサーバーの接地を義務付けるルールだ」。これは新聞報道されたように、中国国内にサーバーがあれば、中国当局は容易に侵入できるし、裁判所の命令があればサーバーに保管された情報を入手できる。つまり「自社の知的財産と顧客の個人情報を奪われるリスクにさらされることになる」(同)のだ。
 さらに、アリババはアマゾンそっくりだし、ウーバーが中国市場から撤退したのは、ウーバーにそっくりの滴滴出行があるからだし、動画投稿サイトの優酷綱はYouTubeにそっくりだし、小米の端末はiPhoneにそっくりだ。こうして、中国のIT企業は、アメリカのシリコンバレー発のビジネスモデルやアイディアやテクノロジーを真似て成長してきた面が大きく、仮に海外市場に進出すれば「法的措置を取られて巨額の権利使用料や制裁金を支払う羽目になりかねない」(同)と言い、実際に海外進出せず中国市場にとどまっている企業が多い。そして、「アリババを通して売られている商品のかなりの割合が偽物だ。百度の検索エンジンはグーグルよりだいぶ劣るし、チャイナ・モバイルの料金は余りに高い。ウーバーの中国部門が滴滴出行に売却されると発表された翌日にはさそく、料金が大幅に引き上げられた」(同)といったあたりに、ガラパゴス的な片鱗を見るわけだ。
 なお、中国でアリババが運営する「支付宝(アリペイ)」とか、テンセントが運営する「微信支付(ウィーチャット・ペイメント)」が瞬く間に広がったのを、技術と市場の新結合、所謂イノベーションの成果と褒めそやす人がいたが、勘違いだ。中東やアフリカで携帯電話が瞬く間に広まったのは固定電話がなかったからだし、同じように中国にクレジットカードもデビットカードも電子マネーも広まっていなかったからだ。つまり障壁となって立ち塞がる既存インフラがないという新興国特有の現象に過ぎない。
 中国では、国内の悪いニュースは報道されず、良いニュースばかりが報道され、逆に海外の良いニュースは(中国当局に都合が良くないので)報道されず、悪いニュースばかりが(中国当局に都合が良いので)報道されると言われる。自らに都合が良いだけの小手先の対応は、経済について言えば、上に述べたような極めて恣意的・限定的な市場開放となり、そんな社会にとても将来があるとは思えないのである。
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