風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

陰謀論

2020-01-25 23:24:22 | 時事放談
 私はまあまあ陰謀論が好きだ(笑)。学生時代にはフリーメーソンとかユダヤが皇室に繋がるとかいったトンデモ本に近いものを楽しんだものだ。しかしそれを信じるかどうかは別次元の話だ。知人の一人は国際情勢を何でも国際ユダヤ資本の陰謀に結び付けるので閉口している。物事には実体(ビジネス)とカネ(金融)の両側面があり、表裏一体なので、金融から見たビジネスの陰謀ストーリーを描けないことはない。それは否定しないが、ビジネスの主体の意思を軽視してもらっては困る。というわけで陰謀論は、それこそ成吉思汗は実は源義経だったといった類いのエンターテインメントの一つだと思うことにしている。もっとも断片的な事実は否定しないから、頭の中で、「事実」として記憶するでもなく、「虚偽」として捨象するでもなく、「保留」ボックスに入れて区別して保存している(笑)
 このブログで陰謀論とタイトルして書こうとしているのは、例えばIR疑惑だとか、あるいは三菱電機がサイバー攻撃を受けたことを半年以上も公表しなかったことに対して、まるで昭和の政治家を彷彿とさせる政治腐敗だとか、責任ある情報公開にはほど遠い閉鎖的な企業文化だと、批判するのは結構だが、それだけではないだろうと思っているからだ。というのは、いずれも仕掛けたのは中国という共通項がある。そうは言っても、所詮は言わば「保留」ボックスに入れて確信は持てないが留意すべきと思っている私の「妄想」の類いに過ぎない(笑)
 IRに関しては、政治家の責任は言うまでもないが、オーストラリアでさんざん報道されているように、中国による外国の政治家などへの不公正なアプローチという側面をも見逃すべきではないだろう。
 三菱電機に関しては、「機密性の高い技術情報や取引先に関わる重要な情報は流出していない」と公式発表し、いまのところ「被害や影響は確認されていない」としている。防衛装備品の分野で、火器管制レーダーの「J/APG-2」や長射程空対空ミサイルに搭載するアクティブ・フェーズド・アレイ(AESA)レーダーなど、存在感を示す同社だが、幸いにも世間では悪名高い(!?)「特定秘密保護法」のおかげで、某社では、こうした機密情報に接する社員を厳密に制限し(セキュリティ・チェック)、ネットワークからも遮断するといった厳重な体制を敷いていると聞いており、三菱電機でも同様の措置が講じられているであろうことが想像される。問題は、採用応募者や従業員、グループ企業の退職者ら最大で8122人分の個人情報が流出した可能性がある、という問題の方である。
 中国に関しては、米中対立の中で「中国製造2025」が注目された。ドイツが言い始めたインダストリー4.0を担う基幹技術を国産化するという野心的な試みで、例えば産業のコメとされる半導体については、2025年に70%の国産化を目標としている。ところが現実は生易しいものではなく、半年ほど前に聞いた話によると、世界の工場・中国で使用される半導体の8割方は他国からの購入品だという。とてもじゃないが2025年の目標は達成されない(が、中国共産党の統治に誤謬があってはならない)というので、先月の日経によれば、ここ数年、台湾の世界的な半導体メーカー・台湾積体電路製造(TSMC)に対して高待遇をちらつかせて引き抜いた管理職や技術者は、台湾の経済誌「商業周刊」によれば3千人に及ぶというし、こうしてカネで買うか、窃取することに余念がないと見られている。
 他方、アメリカは、2017年12月の国家安全保障戦略で明らかにしたように、ロシアと並んで中国を、技術、宣伝、および強制力を用いながら、米国の国益や価値観と対極にある世界を形成しようとする修正主義勢力と断じ、翌2018年8月の国防権限法2019では、中国を念頭に、機微技術管理を強化することを法制化し、昨年5月の大統領令では、情報通信技術やサービスなどのサプライチェーンを保全することを宣言した。この大統領令では、中国を名指しはしなかったが、「敵対勢力」は、機密情報が行き交い、重要な社会インフラを支える情報通信技術やサービスの脆弱性を突こうとしていること、こうした「敵対勢力」の息がかかった情報通信技術やサービスを使うことは、国家安全保障上の脅威となり得ること、情報通信技術分野でのオープンな投資環境を維持することはアメリカの経済成長や繁栄にとって重要だが、安全保障とのバランスを考慮しなければならないこと、をその前文で謳っている。アメリカでは、いわゆる防衛装備品の中に、中国製部品が採用されていたり、中国が牛耳るレア・メタルに依存していたりするのは、危険だと報じられており、さらに国防総省は、中国の国家ぐるみのダンピング、公的補助金、さらに知的財産窃取を含む略奪的慣行が、アメリカの国防産業基盤を崩壊させかねないことを懸念している。国防権限法2019の中で示した台湾へのコミットメントは、戦闘機やミサイルを売り込むという(それによって中国をイラつかせているという)トランプ流の商法ではなく、今や世界の半導体製造基盤となった台湾を、アメリカの重要なサプライチェーンを構成するものとして保全する、という文脈で理解すべきだと思っている。アメリカ政府が、先の半導体メーカーTSMCに対して、アメリカ国内で生産するよう圧力をかけていると報じられているのはその証左だろう。
 回り道になったが、三菱電機は、2000年代初めに半導体産業から撤退したとされる日本にあって、随一の半導体製造基盤を今なお有し、窒化ガリウム(GaN)を使った電子機器では世界トップクラスの技術力を持ち、中国の垂涎の的である。私が懸念するのは、中国がこの分野の技術者を狙っているのではないかということである。三菱電機の個人情報の流出、もっと言うと、同社のパワハラ問題(それによる従業員の動揺や心の離反)だって、この流れに位置づけられるのだとすれば、恐ろしいことだ。いや、私の単なる妄想に過ぎないということにしておこう。
 ところで、三菱電機のサイバー攻撃被害をスクープしたのは朝日新聞だが、関連する記事はことごとく有料会員限定に指定されており、私のような貧乏人には肝心の後半部分が閲覧できない。社会の公器を自任する全国紙には、公共性の高い(と言ってしまえば全てそうだと反論されそうだが)記事を無料公開してもらえないものだろうか・・・
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