風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

韓国の成熟(前)

2014-10-15 01:47:39 | 時事放談
 韓国は、まがりなりにも自由・民主主義国家に分類されるものの、こと日本に対しては日頃から不条理な仕打ちばかりで、どうにも扱いに困ってきましたが、さらに理解に苦しむ事件が起こりました。
 産経新聞の前ソウル支局長が8月3日に同ウェブサイトに書いた朴大統領に関するコラムを巡り、今月8日、検察当局から情報通信網法(情報通信網利用促進および情報保護などに関する法律)における名誉毀損で在宅起訴され、来月13日、ソウル中央地裁で初公判が開かれることが明らかになりました。弁護人は起訴前の9月30日、①記事などに関する資料は全て確保されており証拠隠滅の懸念はなく、②一時出国しても逃亡の可能性がない、などとして、出国禁止を速やかに解除するよう求める文書をソウル中央地検に提出していましたが、これまで出国禁止の延長が6回繰り返され、前ソウル支局長は帰任辞令が出ているにも関わらず、2ヶ月以上、出国できない状態が続いています。
 当該コラムは、下世話な話ですが、「朴槿恵大統領が旅客船沈没当日、行方不明に…誰と会っていた?」と題するもので、7月18日に韓国最大部数の日刊紙・朝鮮日報に掲載された記者コラム(と証券街の噂話)から素材を得たものでした。終わりに朝鮮日報コラムを引用して「(前略)国政運営で高い支持を維持しているのであれば、ウワサが立つこともないだろう。大統領個人への信頼が崩れ、あらゆるウワサが出てきているのである」と書き、「朴政権のレームダック(死に体)化は、着実に進んでいるようだ」と本人の言葉で結んでいます。朝鮮王朝末期の第26代王・高宗の妃、閔妃(ミンぴ)と言えば、「自身の権力欲のみで庶民の生活を思いやることは無く」(日韓文化交流協会顧問を歴任、韓国・加耶大学校客員教授の崔基鎬氏)、「頭は良かったが朝鮮の玉座にとって恥となるほど最も残酷な人物」(米国の朝鮮専門家ジョージ・トランブル・ラッド氏)で、「誰からも支持を得られなかった閔妃は、外国勢力に頼り、自身の権力欲のために清を引き入れ、朝鮮を日清戦争の地とした」(『わかりやすい朝鮮社会の歴史』著者・朴垠鳳氏)と酷評される人物ですが、最近、朴槿恵大統領の独裁的なところを閔妃に譬える韓国専門家もいるくらいで、当該コラムに激怒したのでしょう。反政権色の強い左派系紙・ハンギョレは、「検察は大統領府が産経を非難した直後に捜査に着手した」として、検察が法よりも朴大統領の面目のために動いたとの見方を示しました。
 このコラムは飽くまで日本の読者に向けて書かれたものだったにも関わらず、韓国の市民団体が大統領の名誉を毀損するものだと反発し、告発したのを受けて、ソウル中央地検が加藤氏を事情聴取のために出頭させ、出国禁止措置を経て、起訴に至ったという、片や素材を提供した朝鮮日報の方は口頭注意で済まされるという、なんとも腑に落ちない話です。本来、報道機関への捜査は政権批判への取り締まりにつながりかねず、「個人の事案とは一線を引くべき」(韓国の法律に詳しい弁護士)、「公職者の公務にかかわる以上、名誉毀損に当たらず、判例上も無罪が明らか」(韓国の法学科教授)と言われるにもかかわらず、です。
 これに対し、韓国の外国メディアで構成するソウル外信記者クラブは「メディアの自由な取材の権利を著しく侵害する余地がある点に深い憂慮を表する」などとする声明を発表したほか、国際ジャーナリスト組織・国境なき記者団は、韓国当局に対し、起訴しないよう求める声明を発表するとともに、「メディアが大統領を含む政治家の行動をただすのは、まったく正常なこと」と指摘しました。米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)は、「刑事上の名誉毀損に関する法律がいかに言論の抑圧に使われるかの実例」だと指摘し、同様の報道をした韓国メディアの記者が事情聴取されず、韓国にほとんど読者がいない外国の新聞の記者が聴取の対象になっていることに疑問を投げかけたそうですし、そもそも米国・国務省は2013年版の人権報告書の中で、韓国について「法律が名誉毀損を幅広く定義して刑事罰の対象としており、取材活動を萎縮させる恐れがある」と指摘していました。産経新聞は、米国に本部を置く国際人権団体で、世界各国の「報道の自由度」を毎年発表している「フリーダムハウス」のプロジェクト・マネジャー、ジェニファー・ダナム氏に電話インタビューし、その談話を載せています。

(引用)
 (起訴は)不幸なことながら、驚くに値しない。韓国では名誉毀損による起訴が増加しており、それは紙の媒体以上に、ウェブサイト上のニュースに対するものが多いからだ。
 韓国では李明博(イ・ミョンバク)前政権以降、報道の自由が低下しており、フリーダムハウスの評価でも、「自由」から「部分的に自由」というランクに落ちている。こうした傾向は朴槿恵政権下でも進行しており、強く懸念している。
 北朝鮮を礼賛し、あるいは韓国の大統領に批判的な内容を掲載したウェブサイトの多くが、大統領府の要請によって妨害、削除されている。
 とりわけ、報道の自由を名誉毀損という法的手段によって侵害することは、現代の民主主義社会にあってあるまじきことだ。韓国政府は加藤氏に対する事案のように、名誉毀損を含む異なる方法により、(政権に不利な)内容を統制しようとしている。
 フリーダムハウスの「2014年報道の自由報告書」の評価では、韓国の報道の自由度は197カ国中68位だ。加藤氏を起訴したことで、次期報告での評価はさらに低下するだろう。
 とくに公人(大統領)に対する報道は自由であるべきで、報道により名誉毀損に問われることがあってはならない。韓国の民主主義は未熟だ。
(引用おわり)

 当然のことながら、韓国・国会においても、野党は、日頃から歴史認識をめぐって産経新聞には批判的だっただけに、今回の起訴によってその産経新聞がよりによって“言論弾圧の被害者”に祭り上げられた上、韓国の国際的なイメージを著しく低下させるという、「二重の逆効果を招いた」として批判しました。
 などと、くどくどと、これでもかと引用するのは大人げないのですが、要は、四面楚歌になることがこれほど明白でありながら、韓国の検察ひいては裏で糸を引いているとされる大統領(府)が、暴走を止められないのは何故か。勿体をつけるつもりは毛頭ないのですが、長くなりましたので続きはまた明日。
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