今年もまた正月恒例の箱根駅伝を見るとはなしに見てしまいました。
一般に、出雲駅伝、全日本大学駅伝と併せて「大学三大駅伝」と呼ばれますが、箱根駅伝だけが関東学生陸連が主催する地方大会であり、10位以内に入ると出雲駅伝(同年体育の日開催)に、3位以内に入ると全日本大学駅伝(同年11月第1日曜日開催)に、それぞれ関東代表として出場できるという特典付きです(とは以前もブログに書きました)。しかし駅伝の全国大会ではだいたい関東の大学が上位を占めるため(実際に関西の大学は、出雲駅伝で鹿児島の大学が12位、全日本大学駅伝では立命館の13位が最高でした)、実質的には全国大会と言ってよく、むしろシーズンのトリを飾る箱根駅伝は知名度が高いために各校が照準を合わせて来ますし、出雲駅伝が6区間44.5キロ、全日本大学駅伝が8区間106.8キロなのに対して、同じ駅伝とは言え箱根駅伝は10区間218キロと距離が格段に長く(とりわけマラソン好きの日本人には)違った楽しみがあり、正月、バラエティの特番続きで辟易している時に、恰好の逃げ場、あるいは一服の清涼剤になっていると言えましょう。日本テレビ系で放送された2日間の平均視聴率(関東地区)は、番組歴代3位の28.5%を記録したそうです(ビデオリサーチ調べ)。
レースは、日体大が30年ぶり10度目の総合優勝を果たしました。下馬評では、東洋大と駒大の「2強対決」、あるいはそれに、半歩遅れる早稲田、明治と、一歩遅れる青学、日体大を加えた「2強+4」の展開が予想されていました(特別協賛のサッポロビールが配っていた観戦ガイドなど)が、レースは蓋を開けて見ないと分かりません。日体大は、昨年、創部以来のワースト記録となる19位に終わってシード権を逃し予選会から出場せざるを得なかった上、昨年の復路で繰り上げスタートとなって襷を守れなかった屈辱から、4年生ではなく3年生を主将に抜擢して喝を入れ(更に言うと当初はチームがぎくしゃくしましたが最終的に4年生が主将を盛り立てて)、どん底から這い上がって来た・・・というような美談がまたぞろ報じられていました。
確かに、駅伝は、走る区間によって高低差や風の強弱など環境の違いがあって人によってその状況によって向き不向きがあるでしょうし、トラックを一斉に走るのではなく襷を繋いでいくわけで、順位やその時々の競争環境によって実力を発揮しづらいことも実力以上のこともあるでしょうから、トラックの記録もさることながら、メンタルな部分も大きいだろうことは想像されます。実力6割、その日のコンディション2割、運2割とは、私がよく引用する張本勲さんの名言ですが、駅伝にも応用できるとすれば、まさに実力以外の4割の部分ですね。悔しさをバネに・・・というのは、実力以上を発揮する原動力たり得ることでしょう。しかし、精神論はともかく、冷静に振り返って見ると、コース攻略、とりわけ最長の23.4キロで864メートルの高低差を駆け上がる「上りの5区」をどう乗り切るかが大きなポイントだったように思います。
昨年までの4年間、5区で圧倒的な強さを見せた「新・山の神」柏原竜二を擁した東洋大が3度の総合優勝を手にしたことが記憶に新しいように、今年も5区で区間賞を獲り最優秀選手(金栗杯)にも選ばれた日体大・服部翔大の、風速18メートルをものともせず、重心低くピッチ走法で駆け抜けた走りは圧巻でした。昨年の大会終了後、ゴール地点の大手町で主将と5区に指名されたそうですが、必ずしも5区の走者20名のハーフマラソン記録で特別秀でているわけでもない平均的な彼が2位以下に2分以上の差をつけてぶっち切ったのは、一年間の成果なのか、上りのあるいは強風の相性なのか、メンタルなのか。かたや今年の東洋大は、5区だけで首位の日体大に4分半もの差をつけられてしまいました。
日体大の優勝に関しては、区間賞こそ5区の服部のみでしたが、全員が区間7位内と大きく崩れることなく安定していた上に、監督に「4年生のおかげで勝った」と言わせたかったという4年生3人が7・8・10区で区間2位の好走を見せ(9区の3年生も区間2位)、リードを守るどころか広げたことが大きかったように思います。他方、ライバル校は、例えば早稲田と青学は出だしの1区で17位、18位とそれぞれ出遅れて、区間首位・東洋大からいきなり2分以上のハンディを負ったのは誤算だったでしょうし、駒大は風邪のため欠場した主将に代わって控えが出場した4区が区間19位と失速し、明治は9・10区で18位・17位と失速したのも誤算だったことでしょう。そのほか優勝候補ではなかったものの、城西大と中央大は5区で低体温症と脱水症状を起こし途中棄権しました。さぞや悔しい思い、仲間に対して申し訳ない思いで打ちひしがれていることと思います。私も高校生活最後となる田舎の駅伝大会で不本意な走りしか出来ず、悔し涙に暮れました。私の場合はちっぽけなドラマですが、箱根駅伝参加選手それぞれにドラマがあり、そのドラマをメディアが傍から盛り上げるのは余計なお世話です。高校野球のようにきれいごとばかりではないでしょうが、プロでもない彼らが1キロ3分を切るようなハイペースで20キロ前後を走るだけの肉体を鍛え上げ、当日までコンディションを整えるのは、オリンピックのように出場することに価値があります(因みに部員数は、長距離陣(駅伝部員)だけでも、最少の大東文化大で36人、最大の東洋大は63人を数えますが、数ばかりでなく全国から逸材が集まる中で、選ばれたわけです)。出場出来た人も出来なかった人も、素直に健闘を称えたいと思います。
一般に、出雲駅伝、全日本大学駅伝と併せて「大学三大駅伝」と呼ばれますが、箱根駅伝だけが関東学生陸連が主催する地方大会であり、10位以内に入ると出雲駅伝(同年体育の日開催)に、3位以内に入ると全日本大学駅伝(同年11月第1日曜日開催)に、それぞれ関東代表として出場できるという特典付きです(とは以前もブログに書きました)。しかし駅伝の全国大会ではだいたい関東の大学が上位を占めるため(実際に関西の大学は、出雲駅伝で鹿児島の大学が12位、全日本大学駅伝では立命館の13位が最高でした)、実質的には全国大会と言ってよく、むしろシーズンのトリを飾る箱根駅伝は知名度が高いために各校が照準を合わせて来ますし、出雲駅伝が6区間44.5キロ、全日本大学駅伝が8区間106.8キロなのに対して、同じ駅伝とは言え箱根駅伝は10区間218キロと距離が格段に長く(とりわけマラソン好きの日本人には)違った楽しみがあり、正月、バラエティの特番続きで辟易している時に、恰好の逃げ場、あるいは一服の清涼剤になっていると言えましょう。日本テレビ系で放送された2日間の平均視聴率(関東地区)は、番組歴代3位の28.5%を記録したそうです(ビデオリサーチ調べ)。
レースは、日体大が30年ぶり10度目の総合優勝を果たしました。下馬評では、東洋大と駒大の「2強対決」、あるいはそれに、半歩遅れる早稲田、明治と、一歩遅れる青学、日体大を加えた「2強+4」の展開が予想されていました(特別協賛のサッポロビールが配っていた観戦ガイドなど)が、レースは蓋を開けて見ないと分かりません。日体大は、昨年、創部以来のワースト記録となる19位に終わってシード権を逃し予選会から出場せざるを得なかった上、昨年の復路で繰り上げスタートとなって襷を守れなかった屈辱から、4年生ではなく3年生を主将に抜擢して喝を入れ(更に言うと当初はチームがぎくしゃくしましたが最終的に4年生が主将を盛り立てて)、どん底から這い上がって来た・・・というような美談がまたぞろ報じられていました。
確かに、駅伝は、走る区間によって高低差や風の強弱など環境の違いがあって人によってその状況によって向き不向きがあるでしょうし、トラックを一斉に走るのではなく襷を繋いでいくわけで、順位やその時々の競争環境によって実力を発揮しづらいことも実力以上のこともあるでしょうから、トラックの記録もさることながら、メンタルな部分も大きいだろうことは想像されます。実力6割、その日のコンディション2割、運2割とは、私がよく引用する張本勲さんの名言ですが、駅伝にも応用できるとすれば、まさに実力以外の4割の部分ですね。悔しさをバネに・・・というのは、実力以上を発揮する原動力たり得ることでしょう。しかし、精神論はともかく、冷静に振り返って見ると、コース攻略、とりわけ最長の23.4キロで864メートルの高低差を駆け上がる「上りの5区」をどう乗り切るかが大きなポイントだったように思います。
昨年までの4年間、5区で圧倒的な強さを見せた「新・山の神」柏原竜二を擁した東洋大が3度の総合優勝を手にしたことが記憶に新しいように、今年も5区で区間賞を獲り最優秀選手(金栗杯)にも選ばれた日体大・服部翔大の、風速18メートルをものともせず、重心低くピッチ走法で駆け抜けた走りは圧巻でした。昨年の大会終了後、ゴール地点の大手町で主将と5区に指名されたそうですが、必ずしも5区の走者20名のハーフマラソン記録で特別秀でているわけでもない平均的な彼が2位以下に2分以上の差をつけてぶっち切ったのは、一年間の成果なのか、上りのあるいは強風の相性なのか、メンタルなのか。かたや今年の東洋大は、5区だけで首位の日体大に4分半もの差をつけられてしまいました。
日体大の優勝に関しては、区間賞こそ5区の服部のみでしたが、全員が区間7位内と大きく崩れることなく安定していた上に、監督に「4年生のおかげで勝った」と言わせたかったという4年生3人が7・8・10区で区間2位の好走を見せ(9区の3年生も区間2位)、リードを守るどころか広げたことが大きかったように思います。他方、ライバル校は、例えば早稲田と青学は出だしの1区で17位、18位とそれぞれ出遅れて、区間首位・東洋大からいきなり2分以上のハンディを負ったのは誤算だったでしょうし、駒大は風邪のため欠場した主将に代わって控えが出場した4区が区間19位と失速し、明治は9・10区で18位・17位と失速したのも誤算だったことでしょう。そのほか優勝候補ではなかったものの、城西大と中央大は5区で低体温症と脱水症状を起こし途中棄権しました。さぞや悔しい思い、仲間に対して申し訳ない思いで打ちひしがれていることと思います。私も高校生活最後となる田舎の駅伝大会で不本意な走りしか出来ず、悔し涙に暮れました。私の場合はちっぽけなドラマですが、箱根駅伝参加選手それぞれにドラマがあり、そのドラマをメディアが傍から盛り上げるのは余計なお世話です。高校野球のようにきれいごとばかりではないでしょうが、プロでもない彼らが1キロ3分を切るようなハイペースで20キロ前後を走るだけの肉体を鍛え上げ、当日までコンディションを整えるのは、オリンピックのように出場することに価値があります(因みに部員数は、長距離陣(駅伝部員)だけでも、最少の大東文化大で36人、最大の東洋大は63人を数えますが、数ばかりでなく全国から逸材が集まる中で、選ばれたわけです)。出場出来た人も出来なかった人も、素直に健闘を称えたいと思います。