
《石油危機》
【71ページ】
取材後、煙草を吸いながら中山がリビングを見回した。
「この部屋は作戦会議室でもあるんですよ。興銀の連中だけじゃなくて、開銀のコバチュウ(小林中) さんや日本精工の今里広記くんなど、いろんな人たちが来てくれます。僕はここで寝泊まりすることもあるんです」
【71ページ】
いつの間にか灰皿がいっぱいになっている。換気が効いているので煙でもうもうということは無い。ただ、部屋は脂(やに)の臭が染み付いている。二人とものべつまくなしのヘビースモーカーだから気づかないだけのことだ。
【78ページ】
「そうそう。なんだかんだで、自由なアメリカ文化を伝えてくれたマッカーサーは日本人には人気があったからね。僕がこんなふた昔も前の話をするのは、良い気になってはいけないという自戒を込めてのことなんです」
中山は表情をひき締めて、センターテーブルにグラスを戻し、煙草と持ち替えた。
【80ページ】
中山の手から“セブンスター”が離れる事はなかった。高井の“ハイライト”も負けてはいない。
「なるほど。よく分かりました。最近、『日本サウジアラビア協力機構』を立ち上げたのは危機感と表裏一体の関係にあるわけですね」
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中山は煙を吐き出しながら続けた。
【86~87ページ】
三宅が下を向いたので、中山が二本目の煙草に火をつけた。
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中山が煙草を脇の灰皿に置いて、思案顔になった。
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三宅の口調が皮肉っぽくなった。『企画室長の立場を、“そっぺいさん”、わきまえてくださいよ。そこまで指示される覚えはありません』と思って当然だが、中山は笑顔で煙草を燻らせながら言い返した。
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三宅が引き取ったあとで、中山は頭取執務室に移動して、五分ほどぼんやり煙草を吸っていた。
【93ページ】
いけねぇと思い、高井は煙草を灰皿に捨てて、頭を掻いた。
「すみません。入籍したのは最近です。派手なおひろめはまったく無しです。友達の新聞記者に頼んで、内幸町の日本記者倶楽部の食堂で一杯やっただけのことなんです」
[ken] 石油危機については、40年以上も前のことですから、今の若い人たちには実感がないでしょうが、私は当時のことを鮮明に覚えています。日本というお国柄は、資源のない国であることは現在も変わりなく、これだけ世界情勢が波乱含みで推移している昨今、資源がショートするリスクは高いことを覚悟しておく必要があるでしょうね。ところで、本書で「たばこ」のことは、99パーセント「煙草」と書かれていますが、この節にだけ具体的な銘柄が出てきます。中山素平さんが「セブンスター」、記者の高山さんが「ハイライト」です。全体をとおして、場面の導入や切り替えには必ずのように「煙草」が使われ、とくに中山さんのチェーンスモーカーぶりには驚きでした。(つづく)