
『すみだ川』③
【107ページ】
長吉は人間というものは年を取ると、若い時分に経験した若いものしか知らない煩悶不安をばけろりと忘れてしまって、次の時代に生まれて来る若い頃の身の上を極めて無頓着に訓戒批評することができる便利の性質を持っているものだ、年をとったものと若いものの間には、到底一致されない懸隔のあることをつくづく感じた。
【111ページ】
蘿月は仕方なしに雨戸を閉めて、再びぼんやりと釣ランプの下に坐って、続けざまに煙草を喫(の)んでは柱時計の針の動くのを眺めた。
[ken]いわゆる「今の若い者は」の類を口にすることは、私も「説教されるのが大嫌い」であったことから、この歳になってなおさら自戒してきました。何十年と生きてきた経験からわかったことを、若い人に押し付けるのはもってのほかで、やはり若い人を信じてあたたかく見守ることが一番ですね。
それから、「続け様に煙草を」吸う気持ちって、長年の喫煙歴からよく理解できる心情ですし、実際に同じ経験をしたことが数多くあります。たばこは、世間で言われているような悪弊ばかりではなく、気持ちを落ち着かせる沈静作用や食欲を抑える、そして人と人とのコミュニケーションツール効果などがあって、現在もなお私の生活には必須アイテムなのです。