
【217ページ】
日本寺院の建築は山に河に村に都に、いかなる処においても、必ずその周囲の風景と樹木と、また空の色と調和して、ここに特色ある日本固有の風景美を組織している。
【223~224ページ】
----水は江戸時代より継続して今日においても東京の美観を保つ最も貴重なる要素となっている。陸路運輸の便を欠いていた江戸時代にあっては、天然の河流たる隅田川とこれに通ずる幾筋の運河とは、云うまでもなく江戸商業の生命であったが、それと共に都会の住民に対しては春秋四季の娯楽を与え、時に不朽の価値ある詩歌絵画をつくらしめた。
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麻布の古川は芝山内の裏手近くその名も赤羽川と名付けられるようになると、山内の樹木と五重塔の聳ゆる麓を巡って舟楫(しゅうしゅう)の便を与うるのみか、紅葉の頃は四条派の絵にあるような景色を見せる。王子の音無川も三河島の野を潤したその末は山谷堀となって同じく船を泛(う)かべる。

また、現在の東京には江戸時代の主たる流通経路であった運河の跡が数多く残っています。私の大好きな芝浦運河もその一つです。高度成長時代には、黒く油が浮かび異臭を放っていた東京の河川も、工業廃水・生活廃水・雨水の区分排水が実施され、水は透明度を増しすっかりきれいになりました。さらに川岸の美化工事や超高層マンションの建設ラッシュによって、野鳥が飛び交い、人びとが憩い集う川として復活をとげています。
ちなみに、本節に登場する古川は、私が月に2度ほど仕事で訪れる浜松町の金杉橋南を流れています。桜が散れば花びらが川面もピンクに染め、今でも船宿の老舗が営業を続け川岸には屋形船が浮んでいます。毎年、王子の音無川には飛鳥山の桜の時期に訪れます。今年も終業後に夜桜見物へ出かけようと楽しみにしています。