monoろぐ

古典和歌をメインにブログを書いてます。歌題ごとに和歌を四季に分類。

「にほてるや」用例

2015年04月13日 | 日本国語大辞典-な行

 「にほてるや」という用語は枕詞で、「琵琶湖周辺の地名「矢橋」「桜谷」「志賀」にかかる。」という語釈ですが、日本国語大辞典・第二版の和歌用例(新千載集=1359年)よりもさかのぼる用例があります。

にほてるややはせの渡りする舟をいくたびみつつせたのはし守
(27・永久百首、雑三十首、船、664)
『新編国歌大観 4』角川書店、1986年、262ページ

にほてるやさくらだによりおちたぎる浪も花さくうぢのあじろ木
にほてるやしかのうらわのさざ浪に春をもよする風のおとかな
(131・拾玉集、2306、4577)
『新編国歌大観 3』角川書店


「鳴き尽くす」用例

2015年04月05日 | 日本国語大辞典-な行

 「鳴き尽くす」という単語の語釈は「虫などがあらん限りに鳴く。」とのことで、日本国語大辞典では1312年の玉葉和歌集からの例を早い例としてあげていますが、300年ほどさかのぼる用例があります。

なにせんになきつくしけむほととぎすきみがためにとこゑををしまで
(14・能宣集、95)
『新編国歌大観 七巻 私家集編3 歌集』角川書店、1989年、46ページ

けふさらば鳴きつくしてよ鶯の春ののちには誰かしのばん
(27・永久百首、春、残鶯、115、俊頼)
『新編国歌大観 四巻 私家集編2、定数歌編 歌集』角川書店、1986年、251ページ


「名残の雪」用例

2015年02月20日 | 日本国語大辞典-な行

「名残の雪」という用語は、日本国語大辞典・第二版には以下の二つの語釈があります。
①春先まで消え残っている雪。
②春になってから降る雪。

 ①は用例が記載されておらず、②は1780年の辞書例が記載されています。語釈①の用例として古そうな和歌があります。

あまの原春とも見えぬ眺めかなこぞの名残の雪の曙
(六百番歌合、余寒)
『六百番歌合・六百番陳情(岩波文庫)』岩波書店、1936年、28ページ

とし暮し名残の雪やおしからん跡たにつけて春はきにけり
(巻第三百八十二・正治二年院御百首、守覚法親王、春)
塙保己一編『続群書類従・第十四輯下(訂正三版)』続群書類従完成会、1983年、576ページ


「野上(のがみ)」用例

2015年02月10日 | 日本国語大辞典-な行

 「野上(のがみ)」という単語には、地名ではなく、「野の上の方。」という一般名詞の語釈があります。日本国語大辞典・第二版では、俳諧『望一後千句』(1652年)からの例が早いのですが、さらに、400年ほどさかのぼる用例や他にもさかのぼる和歌の用例があります。

あらたまる春に成るらし冬がれののがみのかたにうぐひすのなく
(14・新撰和歌六帖、第六帖、うぐひす、2583)
『新編国歌大観 第二巻』角川書店、1984年、401ページ

うぐひすは物うかるねにうらぶれて野上のかたに春ぞ暮れゆく
(9・宗尊親王三百首、春七十首、68)
『新編国歌大観 第十巻』角川書店、1992年、120ページ

かすみたつ野がみのかたにゆきしかば鶯なきつ春になるらし
(巻第一・春上、54、読人しらず)
岩佐美代子『風雅和歌集全注釈・上巻(笠間注釈叢刊34)』笠間書院、2002年、63ページ