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古典和歌をメインにブログを書いてます。歌題ごとに和歌を四季に分類。

「古葉」用例

2020年10月10日 | 日本国語大辞典-は行

 「古葉(ふるば)」という語は「古びた葉。前年のまま残っている古い葉。」という意味で、日本国語大辞典・第2版では、『日葡辞書』(1603-04年)の例が早いのですが、もっとさかのぼる用例が複数あります。

  太皇大后宮の大進にてとしひさしくなりにけるを亮のあきたりけるをのそむとて
吹あくる風もあらなむ人しれぬ秋をみ山の谷のふるはを
(巻第二百五十六・清輔朝臣集)
『群書類従・第十五輯(訂正三版)』1987年、119ページ

01179 定家  きみになほ-あふさかやまも-かひそなき-すきのふるはに-いろしみえねは
(建保名所百首~日文研和歌データベースより)

01920 河紅葉 御製 
流れつる紅葉そとまる大井川ゐせきやもとのふるはなるらん
(宝治百首~日文研和歌データベースより)

00899 きみかよに-あひおひのまつの-ふるはまて-つゆのめくみに-もれぬうれしさ
(永享百首~日文研和歌データベースより)

00528 人めより古葉はかれぬ朝ことに若菜つむのの雪寒くして
01557 すさむらむ御牧の草の古葉さへ又駒かへる春とみえつつ
03109 古葉こき田中の杉の若みとり植ゑし早苗に色そあらそふ
09486 陰ふかき松のふる葉に千世の数つもれる庭のちりなはらひそ
(草根集~日文研和歌データベースより)


「花の袖」用例

2018年03月31日 | 日本国語大辞典-は行

 「花の袖」という用語は「美しい衣服。はなやかな衣服。多く、春の服をいう。」という語釈が日本国語大辞典に載っており、古い用例としては、謡曲・井筒(1435年頃)の「雪をめぐらす花の袖」という用例が挙げられていますが、もっとさかのぼる用例があります。

春はけふ霞の衣花の袖宿の梢にぬきかけてけり
(巻第三百八十二・正治二年院御百首、下、宜秋門院丹後、春)
『続群書類従 14下』624ページ

花の袖(そで)かへまくをしき今日なれや山ほとゝぎす声はおそきに
(秋篠月清集、夏部、更衣、1056)
『和歌文学大系60 秋篠月清集/明恵上人歌集』明治書院、2013年、172ページ


「花咲く」用例

2018年03月17日 | 日本国語大辞典-は行

 「花咲く」という用語は、日本国語大辞典・第2版では、『日葡辞書』(1603-04年)からの例が早いのですが、もっとさかのぼる用例が複数あります。

花咲きて実(み)はならねども長きけにおもほゆるかも山吹の花(巻十、1860)406ページ
見まくほりわが待ち恋ひし秋萩は枝も繁(しみ)みに花さきにけり(巻十、2124)428ページ
『新訂 新訓万葉集 上巻(岩波文庫)』佐佐木信綱編、岩波書店、1927年

桜をうへてありけるに、やうやく花咲ぬへき時に、かのうへける人身まかりにけれは、その花をみてよめる きのもちゆき 
花よりも/人こそあたに/成にけれ/いつれをさきに/こひんとかみし
(古今和歌集850~国文学研究資料館HPより)

みちとせに花さくもものめづらしくたがことづてぞわれにはあらじ
(4・古今和歌六帖、第五、人づて、2863)
『新編国歌大観2』角川書店、1984年、223ページ

中院に有りける紅梅の卸枝遣さむなど申しけるを又の年の二月計り花咲きたる卸枝に結附けて皇太后宮大夫俊成の許に遣し侍りける
昔よりちらさぬ宿のうめの花わくる心はいろに見ゆらむ
(千載和歌集~日文研HPより)

何方に花咲きぬらむと思ふより四方の山邊にちる心かな
(千載和歌集~日文研HPより)

やまふきの/花咲にけり/蛙なく/井手のさと人/いまやとはまし
(千載和歌集112~国文学研究資料館HPより)

花咲し/野辺のけしきも/霜枯ぬ/これにてそしる/旅の日数を
(千載和歌集510~国文学研究資料館HPより)

色も香もうつるばかりにこの春は花さく宿をかれずもあらなん
(梅枝、三)
『源氏物語3(日本古典文学全集14)』小学館、1990年、403ページ

病おもくなり侍りければ、三井寺へまかりて、京の房に植ゑおきて侍りける梅を、今は花(はな)咲(さ)きぬらん、見ばやといひ侍りければ、折りにつかはして見せければよめる
この世にはまたもあふまじ梅の花ちりぢりならん事ぞかなしき
(巻第十・雑下、361)
『詞花和歌集』(岩波文庫)松田武夫校訂、1939年、75ページ

まがふ色に花咲きぬればよしの山春は晴れせぬ嶺の白雲(30ページ)
山寒み花咲くべくもなかりけりあまりかねても尋ね来にけり(32ページ)
山吹の花咲く井手の里こそはやしうゐたりと思はざらなむ(173ページ)
『新訂山家集』(岩波文庫)佐佐木信綱校訂、1928年

むかしは宣旨をむかてよみければ、枯たる草木(そうもく)も花(はな)さきみなり、悪鬼悪神も隨ひけり。
(巻第八、鼓判官)
『平家物語・下(日本古典文学大系33)』岩波書店、1960年、154ページ


「二筋(ふたすじ)」用例

2017年08月04日 | 日本国語大辞典-は行

 「二筋(ふたすじ)」という単語には「ふたつのすじ。また、ふたつの方向。二本。」という語釈があり、日本国語大辞典・第二版では平家物語(13c前)からの用例が早い例として載せていますが、もっとさかのぼる用例があります。

うらめしながら恋しき人のもとへつかはしける
ならべたる恨も恋もからくみの二すぢながらぬるる袖かな
(117・頼政集、406)
『新編国歌大鑑 5』1985年、523ページ