monoろぐ

古典和歌をメインにブログを書いてます。歌題ごとに和歌を四季に分類。

「さあお」という単語

2019年08月23日 | 日本国語大辞典-さ行

 「青いこと」を意味する「さあお」という単語は日本国語大辞典・第二版には立項されていませんが、以下のとおり複数の用例があります。(古い順に挙げます。)

蒼青(さあを)なる月の光は その上に夜は愁へむ、
(廃園遺珠、幻想)
『三木露風全集 第3巻』三木露風全集刊行会、1974年、574ページ

浮びいづるごとくにも その泳ぎ手はさあをなり
(「游楽」)
『詩歌』第四巻第七號・大正三年七月號(1914年7月1日)白日社、42ページ

 いよよさあをに
わがかなしみは
そのままに あらしめよ
わが胸に生(お)ふる草 しげらせよ
わがみは いよよきよらかに
いよよ さあをになりゆかむ
(「いよよさあをに」)
『《限定版》大手拓次全集 第三巻(詩Ⅲ)』白鳳社 1971年、246ページ

あかときの さあをなる闇(やみ)
(「梢の上の鳥の歌」)
『《限定版》大手拓次全集 第三巻(詩Ⅲ)』白鳳社 1971年、391ページ

くちびるをさあをにぬらしふえをふかうよ
(水底吹笛)
『大岡信著作集 第三巻』青土社、1977年、181ページ

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「袖の淵」用例

2019年07月05日 | 日本国語大辞典-さ行

 「袖の淵」という用語は、涙が多く流れることのたとえで、日本国語大辞典第2版では、浄瑠璃『暦』(1685年)の用例を早い例として挙げていますが、もっとさかのぼる用例が複数あります。

この人にふちなとたつねをきてあはんといひしかは
流れいてんうきなにしはしよとむ哉求めぬ袖の淵はあれ共
(巻第二百七十六・相模集)
塙保己一編『群書類従・第十五輯(訂正三版)』1987年、643ページ

年(とし)月の恋も恨みもつもりては昨日にまさる袖の淵(ふち)哉
(式子内親王集、恋、182)
『和歌文学大系23』(式子内親王集・建礼門院右京大夫集・俊成卿女集・艶詞)明治書院、2001年、31ページ

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「裾③」用例

2019年07月04日 | 日本国語大辞典-さ行

 「裾(すそ)」という単語には「山のふもと。」という語釈があり、日本国語大辞典では1476年の連歌に例を古用例として挙げていますが、もっとさかのぼる用例が複数あります。

しかまつとはやまのすそにともししてなつのよなよなたちあかすかな
(東塔東谷歌合-永長二年)
『新編国歌大観 5 』角川書店、1987年、131ページ

照射するは山のすそに立鹿のめもみせぬ夜をなけきつる哉
(巻第百六十七・堀川院御時百首和歌・夏・照射)
『群書類従・第十一輯(訂正三版)』続群書類従完成会、1993年、152ページ

鹿たゝぬは山のすそにともしゝて幾夜かひなき夜をあかす覧
(巻第三百六十七・金葉和歌集(初度本)・夏)
『続群書類従・第十四輯上(訂正三版)』続群書類従完成会、1982年、53ページ

時鳥は山のすそを尋ねつゝまた里なれぬはつねをそきく
(巻第二百五十四・散木奇歌集・第二・夏・四月)
『群書類従・第十五輯(訂正三版)』続群書類従完成会、1987年、10ページ

よそにのみみ山か裾のさねかすらさねすて過んことそ苦しき
(巻第百六十九・久安六年御百首、実清、恋)
『群書類従・第十一輯(訂正三版)』続群書類従完成会、1993年、219ページ

山居のはじめの秋といふ事を
秋たつと人はつげねど知られけりみ山のすその風のけしきに
小倉の麓にすみ侍りけるに鹿の鳴きけるを聞きて
を鹿なく小ぐらの山のすそちかみたゞひとりすむわが心かな
(山家集~バージニア大学HPより)

時雨する外(と)山が裾(すそ)の薄(うす)紅葉今いくしほか染(そ)めんとすらん
(藤原実房/静空、秋、1855)
『和歌文学大系49 正治二年院初度百首』明治書院、2016年、320ページ

00441 匡房 つまこふる-しかのたちとを-たつぬれは-さやまかすそに-あきかせそふく
(新古今和歌集~日文研HPより)

02302 為家 みねつつく-とやまのすその-ははそはら-あきにはあへす-うすもみちせり
(新撰和歌六帖~日文研HPより)

次に東山のすそに望みて二階堂を禮す。
(海道記~バージニア大学HPより)

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「さしくぶる」用例

2018年12月15日 | 日本国語大辞典-さ行

 日本国語大辞典の「さしくぶる(差燃)」という単語の1603‐04年用例よりも早いと思われる用例があります。

 埋火 信承
山里は雪の下折とりそへてほたさしくふるうつみ火の本
(応永廿一年頓證寺法楽百首)
『続群書類従・第十四輯下(訂正三版)』続群書類従完成会、1983年、669ページ

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「袖冴ゆ」という用語

2018年12月14日 | 日本国語大辞典-さ行

 「袖冴える(袖冴ゆ)」という用語は和歌や謡曲に出てくる用法ですが、日本国語大辞典・第二版には立項していません。袖が極度に冷えることをいう。(とても寒いことを表現する。)
 見つけた用例を、古い順に挙げます。

 道芝(しば)の霜うちはらふ袖さえてまだ夜深くも出にける哉
(冬十五首、霜、国信、915)
『和歌文学大系15 堀河院百首和歌』明治書院、2002年、169ページ

そてさえて-あらしふくよの-つきみれは-こすゑもそらも-くもらさりけり
(頼政集・261~日文研HPより)

かたしきの袖冴え渡る冬の夜は床に衾のかひもなきかな
(六百番歌合、冬、衾)
『六百番歌合・六百番陳情(岩波文庫)』峯岸義秋校訂、岩波書店、1936年、207ページ

九重の雲のうへふし袖さえてまどろむ程の時のまもなし
(弁内侍日記~群書類従18)

後深草院辨内侍
しらぬにしるき冬の空かな
木枯しの吹かぬ折りさへ袖さえて
(菟玖波集・卷第六 冬連歌・560~バージニア大学HPより)

いとど氷室の構へして立ち去ることもなつかげの水にも澄める氷室守夏衣なれども袖冴ゆる気色なりけり
(「氷室」)
『謡曲集下(新潮日本古典集成)』伊藤正義校注、新潮社、1988年、144ページ

降る雪の蓑代衣袖さえて、春待ちわぶる心かな。
(「鵜祭」)
『謡曲評釋』大和田建樹、193ページ

袖さえて、得も寝ざりしが、今朝見れば、山山白く、雪ふりにけり。
『神・人間・自由』木下尚江、中央公論社、1934年、428ページ

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