こちらはウィルスではなく、「赤面(あかづら)疱瘡(ほうそう)」という架空の病気が大流行し、罹患するのは男、死亡率も高いので、生き残っているのは女性が多いため、将軍も女将軍となり、大奥にはべるのも男達、なので男女の立場が逆転するという、面白い設定です。
浅野内匠頭の松の廊下の刃傷事件、生類憐れみの令、江島生島事件など。どれも、男女逆転の設定の妙が効いてますが、従来の解釈とは全く違う方向で描かれていて面白いんです。男女の役割も(子供を産むとこ以外は)逆転してるので、「そりゃ男のセリフだよ」って内容を女が言ってるんです。
純愛を描く恋愛ストーリーもありますが、政治的かけひきのドロドロしたストーリーもあります。
ちなみに、過去、実写映画化されましたが、そちらは見てません。
平賀源内も女の設定。源内や青沼たちのワクチン発明の話が一番おススメ。泣ける話です。
現在17巻まで刊行中。家茂は女性設定、和宮も女性。慶喜像がまた、新鮮ですよ。ラストをどう締めるのか、楽しみです。
GWは、長編マンガを大人読み。
ウィルス関連で、吉田秋生の「YASHA」+「イヴの眠り」を再読しました。フィクションでは簡単にワクチンが完成して、ウィルス拡大を封じ込めてるのですが、現実世界で特効薬が完成するのはだいぶ日数がかかるんですね。
四月の風
ほのぐらい丁子の葉かげをもれてくる風のやはらかさは
恋人の夜(よる)の息(いき)のやうにやさしく
わたしのほほをかるくなでてはたはむれる。
そのにほひはあまく、
そのこゑはさわやかに、
うぐひすの黄色い胸毛(むなげ)のやうになまぬるい。
(『《限定版》大手拓次全集 第一巻』(白鳳社、昭和45年)より)
春の夜
うつゝなき夢捲くごとく、
連翹の薫り、さながら――
いづこより洩れてくるか。
辿り入る彩ある巻に、
花しどろに紅や紫、
花踏みて酔へるが如し。
(「三木露風全集」より)
流れ ギー・シャルル・クロス
流れの真中にあつて
右にも左にも動かず
百年そこにとどまる石のやうに
萬物の真中に
たつた一人でおのれは居る。
水の中に石一つ、
わななきふるへる水の中に。
おのれの有である何物をも
おのれは持たぬ、さうして
おのれは誰の有でもない。
一人であること、
永久に一人であること、
それを納得し、それを識ること、
此の求める所のない安心に
較ぶべき夢があらうか?
激せずに流れ行く水は
静かでさうして深い。―
おのれつかのまも
世の現實を信じたことがあつたか?
(「月下の一群 堀口大學訳詩集」より)