「時しも」という用語は、日本国語大辞典・第2版では、宴曲『宴曲集』(1296年頃)からの用例を古い例として挙げていますが、もっとさかのぼる用例が複数あります。
鹿啼花
棹鹿やいかゝいひけん萩の花匂ふ時しもつまをこふらん
(貫之集)
『群書類従・第十四輯(訂正三版)』567ページ
五月雨とことなしびつる時しもぞ人に樗の花は咲きける
(古今和歌六帖、第六、木、あふち)
『校註国歌大系9』606ページ
言ふ方なう心細きに、時しも秋の風さへ、身にしみわたりつつ、野原の露も、袖に玉散る片敷の床(とこ)のさびしさ、今さらならはぬ心地して、
夜な夜なは寝覚めの床(とこ)に露散りてむなしき秋の風ぞ言(こと)問ふ
(いはでしのぶ)
『中世王朝物語全集4』笠間書院