亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

利益確定売り続くNY金、FOMC後利上げ観測は後退

2023年11月02日 19時24分07秒 | 金市場

注目の米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果が判明した11月2日のNY金は、声明文発表前に終了した通常取引は続落だった。前日比6.80ドル安の1987.50ドルで終了した。

この日は米国関連で重要指標の発表があり、いずれも市場予想を下回り米国景気の減速基調が強まる可能性が意識されたことから、米長期金利が低下。NY午前の中盤にはNY金は一時2005.90ドルまで買われる局面があった。ただし、その後為替市場でドル高が進んだことをきっかけに、一転し売りが膨らみ1980ドル半ばまで急速に値を消すことになった。

中東情勢の流動化を手掛かりにファンドの買い建て(ロング)が300トン近くまで膨らんでおり、利益確定の売りも出やすくなっている。 一転して売り優勢に傾く流れは、FOMC後のパウエル連邦準備理事会(FOMC)議長の記者会見が始まった直後にも見られた。この時1980ドル台半ばに水準を落とした金は、そのまま冒頭で触れたように1987.50ドルで通常取引を終了した。

 

この日発表された10月のADP全米民間雇用報告は、非農業部門の雇用者数が前月比11万3000人増と市場予想(13万人増)を下回った。労働需給が低下していることを示した。同じく10月のISM(サプライマネジメント協会)製造業景況感指数は46.7と9月(49.0)から低下し、市場予想(49.2)を下回った。好不況の分かれ目となる50を12カ月連続で下回ることになったが、これは21年ぶりのこと。先行指標とされる新規受注指数が大きく低下し、雇用指数も分岐点となる50を下回り、製造業の先行きに陰りを見せている。

 

通常取引終了後に発表されたFOMC声明文は、予想通り政策金利を2会合連続で据え置いた。

「(家計・企業の)金融環境の引き締まり」という文言を今回新たに声明文に加え、9月以降に見られた米長期金利の急上昇で、追加利上げの必要性が低下しているとのシグナルを発した。ただパウエルFRB議長は記者会見にて12月の次回FOMC会合で利上げを決定する可能性を否定しなかった。記者会見冒頭でのこの発言に時間外取引に入っていた金市場は前述のように反応し、午前中の安値を下回り一時1978.20ドルまで売られた。

ただし、その後引き締め策の過不足を巡っては「リスクが均衡した状態に近づきつつある」との見方を示し、利上げ局面が終了した可能性も認めた。それは、3カ月に1度の頻度で公表するFOMC参加者の経済見通し(通称ドットチャート、ドットプロット)、なかでも金利見通しに関する発言だった。「その有効性は3カ月の間におそらく低下する」とした。

9月会合のドットチャートでは、年内にあと1回追加利上げが見込まれていた。議長の発言により市場の受け止め方は、次回12月の会合でも利上げはないという見立てだった。米長期債利回りは低下し、株価は上昇、NY金も買戻しの動きに値を戻し、時間外取引は1991.30ドルで終了した。

インフレ率を当局目標の2%に戻す上で金融政策が十分に景気抑制的かどうか、まだ判断に確信を持てないとも議長は述べた。今後も会合毎のデータに基づいた政策判断が続くことになりそうだ。

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