亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

「米長期債利回りの上昇で変調きたすeverything rally」 

2021年02月17日 21時01分53秒 | 金市場
大統領の日(President’s Day)の祭日を含む3連休明けのNY市場の金価格は、続落となった。追加経済対策の早期成立や新型コロナウイルスのワクチン普及による景気回復期待の一方で、財政拡大による景気過熱懸念から米10年債など長期金利が急伸し、金をはじめ貴金属全般の売りにつながった。

NY時間の早朝まで1820ドル近辺で落ち着いた値動きとなっていた金は、NYの通常取引開始時間に向け下げ足を速めた。通常取引開始後は米金融当局者(セントルイス連銀ブラード総裁)の景気に対する楽観見通しや、好調な経済指標(NY連銀製造業景況指数)を受け、下げが加速し、節目の1800ドルを割れることになった。一連の流れの中で2週間ぶりの安値となる1788.10ドルまで売られたところで、反発となった。NY時間のお昼前には1810ドルを越えるところまで値を戻したものの、金利裁定(利回り上昇に反応した)とみられるファンドの売りに上値を抑えられる形で、取引を終了することになった。NYコメックスの通常取引は前週末比24.20ドル安の1799.00ドルで取引を終了した。その後の時間外では、さらに水準を切り下げ、いわゆる引け味は良くなかった。

このところ上昇が目立っていたプラチナも、上げ幅を削って取引を終了することになった。NY市場が休場となった週明けのグローベックス電子取引にて6年ぶりの高水準となる1300ドル台乗せを見ていたプラチナは、それを反映し16日のNY時間外アジア時間に一時1348.20ドルまで上昇。しかし、さすがにその後は利益確定の売りが先行し、水準を徐々に切り下げながら相場は進行することになった。結局、16日の取引は1279.60ドルで終了となった。
前週末のNYMEXの通常取引清算値での比較では、20.6ドル高だが、実質的には30ドル強下げたかたちになった。

ここまでの上昇自体が、足元のプラチナ需給の変化を映したものでなく、金価格と比較した上での出遅れ感や世界景気正常化に向けた期待先行の投資マネーの流入によるところが大きかった。この日は、話題のビットコインが初めて5万ドルを突破するなど、市場ではカネ余りの中で“everything rally”や“sweeping rally”など、循環的に何でも買っていく上げ相場の状況を表す言葉も見られていた。ありていに表現すると、手当たり次第に目新しいものを食い散らかす印象の、投資マネーの広がりがみられている。貴金属市場では、先行した銀相場に続き、その流れが動きの乏しかったプラチナにも波及したというところだろう。少なくとも、現状ではそうみえる。。

米長期金利の上昇が波乱要因となった市場だが、この日の10年債利回りは、昨年2月2以来の1.361%に。30年債利回りも1年ぶりの2.095%に上昇となっている。一方、2年債利回りは米連邦準備理事会(FRB)の低金利政策で低水準を維持している関係で、10年債との利回り格差は、2017年以来の大きさとなっている。債券市場内で、景気回復見通しが高まっていることを表している。

米国では期待インフレ率の上昇が指摘されているが、実際のインフレ率の上昇にはタイムラグがある。それでも市場セントメントが、見通しにそって高まるなら金は買われるが、そこに至るまでの単純な金利上昇は売り要因として捉えられる。しかし、方向が大事でやはり経済はインフレ傾向が高まると思われ、金の大崩れはないと思う。

長期金利上昇で変調をきたすのは、何でも買いの伸びきった物色スタンスと思われる。



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