10月3日、7営業日続落となったNY金。朝方発表された堅調な雇用関連指標が、FRBによる高金利政策の長期化のみならず、市場では下火になっている年内の追加利上げ観測を後押しするのではとの見方から長期金利がさらに上昇、金市場では売りが先行した。 通常取引は前日比5.70ドル安の1841.50ドルで終了。終値は3月9日以来約7カ月ぶりの安値に。
この日の安値はNY時間外のアジア時間につけた1830.90ドルだった。
米10年債利回りが4.8%を超え2007年8月以来の高水準に達したのはNYの取引時間帯で、金は上下に値が振れたものの、アジア時間に付けた安値にトライすることはなかった。目先の底打ちは近いと思われる。
この日市場の手掛かり材料になったのは、8月の米雇用動態調査(JOLTS)だった。非農業部門の求人件数が961万件と、市場予想の880万件(ロイター調べ)を大きく上回り約2年ぶりの高水準ということに。前月比の増加は4カ月ぶりで、専門職のほか、ビジネス・サービス部門いわゆるホワイトカラーの需要が急増した。
なお現地時間の夕刻に米国下院はマッカーシー下院議長(共和)の解任を賛成216、反対210で決議した。暫定議長には現在、下院金融委員会の委員長を務めるマクヘンリー議員(共和)が指名されたと伝えられた。
1月の新議会発足に際し、共和党保守強硬派(フリーダムコーカス)の反対により15回目の投票でやっと選出されたマッカーシー議長だったが、その際に反対派を取り込むため譲歩案を提示。1人でも解任動議を提出できるように条件を大幅に緩和した経緯があり、今回のような事態発生には一定の予見があった。
政府機関閉鎖に至るギリギリの9月30日に成立した次年度に向けたつなぎ予算に、強硬派が強く求めていた法案が盛り込まれておらず、不満を高めており解任動議の懸念が高まっていた。しかし一定のハードルがあるとみられたが、予想外にあっさりと可決に。 後任の下院議長選は今月11日に予定しているとされるものの不明。次期議長の候補者も不透明で、米下院の法案審議はしばらくストップすることになりそうだ。
その中でつなぎ予算の期限は11月17日に切られており、議会分断の中で時間はほとんどないに等しいだろう。
そもそも米主要格付け会社3社の中で唯一米国の格付けを最上位としているムーディーズ・インベスターズ・サービスが9月、「ガバナンス(統治)」に関する懸念を理由に米国への信頼が揺らいでいると警告していた。今年8月に格付けを引き下げたフィッチ・レーティングスも、2011年8月に引き下げたS&Pグローバルも同様に「ガバナンス(統治)」、政治機能の不全を理由の一つにしているだけに、ムーディーズも格付け引き下げを発表する可能性が高まりそうだ。
つなぎ予算が失効するまでに、事態が鎮静化するか否かにかかってくるが難しいだろう。仮に格下げとなればNY金の買い手掛かり材料になるとみられる。一方で株式市場はじめ金融市場は荒れそうだ。