亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

FRB超タカ派化受け荒れる米債市場

2022年03月22日 22時22分19秒 | 金融市場の話題

本日は中盤に、流れからやや小難しい話が入ることに。

報じられたように、この日、パウエル議長は、全米企業エコノミスト協会(NABE)会合での講演で、インフレが「あまりに高すぎる」とし、必要に応じて通常より大きな幅での利上げを実施する可能性があるとして、1回の利上げが50bp(0.5%)となる可能性を示唆したと伝えられた。

FOMC後の記者会見で議長は、「ウクライナ侵攻が起こる前は、インフレは1~3月にはピークを迎え、今年後半には下がり始めるとみていた」として、対ロシア制裁により、「供給網の問題解決も先送りされる可能性がある。今年の半ばまでは物価上昇率は高止まりし、23年には急激に下がるだろう」としていた。21日の発言で興味深かったのは、ウクライナ侵攻前の見通しについて「こうした予測はすでに崩れ去った」として、インフレの高止まりの可能性を前提に、「一段と迅速に行動する必要がある」とした」。ロシア金融経済制裁を受け、サプライチェーン問題の解決は長引くことも前提に加えたとみられる。

労働市場が極度に逼迫する状況は、経済の強さの象徴であり、想定される引き締め策に耐えられるという点で、議長はソフトランディングは可能と繰り返している。インフレ率は向こう3年以内に「2%近辺」に低下すると予想している。この5カ月余りの間に、政策スタンスという振り子は、大きく逆方向に振れたが、これほどの振幅の大きさは初めてではないかとも思う。

 

保有資産の縮小、つまりバランスシートの縮小、量的引き締め策(QT)については、今回のFOMCにてかなりの議論を尽くしたとみられ、流れとしては4月6日に発表される議事要旨にてその内容が明らかになり5月3~4日のFOMCにて着手が決められると思われる。1月時点では年後半にスタートが見込まれ、タカ派のFRB高官が7月スタートを唱えていたが、5月に前倒しでスタートすることになりそうだ。

そこで気になるのが、こうした極端な転向を受け、米債(米国債)相場が荒れ模様となっていること。先週後半以降つまりFOMC以降、米債金利は全般的に急騰状態にある。。

なかでもFRBの利上げ意向を映し出す2年債利回りは、21日時点で一時2.136%まで上昇し2.114%で終了。19年5月24日以来の高水準に。一方、基準金利となる10年債利回りは一時2.322%まで上昇し2.294%で終了。こちらも19年5月以来2年10カ月ぶりの水準に。注目は、2年と10年債の利回り差が急速に縮小していること。21日時点で0.17%(17bp)まで縮小。長短金利差が縮小から逆転(逆イールド2年債>10年債)すると、将来の景気後退のシグナルとされるもの。既に先週時点で10年債は、7年債、さらに5年債の利回りを下回っており。この日は2.32%で取引を終えた3年債との逆転現象もみられている。本来であれば償還期限の長い債券は、より高い利回りが得られるのが一般的な形だが、先行きの景気見通しが悪いと長期債利回りは上がりにくくなる。一方、短い方はFRBの利上げ加速観測から上昇ピッチが上がる傾向がある。パウエル発言で短期債の利回りが押し上げられた。

 

それにしても利上げサイクル入りの緒についたに過ぎない段階で、逆イールドが間近に迫るかのような動きは、何を意味するのか。

単に債券需給の成せる業なのか。というのも、この2年ほどのFRBは償還期間の短い債券も買い付け額を増やした関係で、毎月の償還額が前回の縮小時(17~18年)と比べ大きいとされることによる。つまりFRBが償還分の再投資を見送ることで、赤字運営の合衆国連邦政府は、発行する国債を市中消化する必要がある。要は、FRBに代わる買い手を探す必要がある。もちろん見つかるだろうが、そのためには条件が上がる可能性がある。そこで実際に足元で利回りは上がり始めているというわけだ。近い将来の米債需給の悪化を予見する動きが、短いものを中心に金利水準(利回り水準)を押し上げているということか。

本来、米債金利の上昇は金利を生まない金の売り要因となるが、債券市場が発している(発しそうな)景気減速あるいは後退シグナルが先行きを的確に示すとするなら、FRBがこの先想定どおり利上げできるのか懸念が膨らむことになる。米債利回り高騰の中で金が1900ドル台半ばの水準を保っている背景には、こうした要素も関係していると思われる。

今週も主要な米経済指標よりも伝えられるウクライナ情勢のニュースが、一定の織り込みが進んでいるとはいえ、市場にとって通奏低音的な材料になりそうだ。24日から開催されるEU首脳会議にバイデン米大統領が出席することから、決定事項や共同声明なども注目される。問題は、それに対するロシア、プーチン大統領の反応となる。

もうひとつ、今週は連日にわたり多くのFRB高官の発言が予定されている。すでに大きくタカ派に傾いたFRBの政策方針は、金市場でも一定の織り込みが進んでいるものの、株式など他の市場の反応をにらみながらの金市場の反応となりそうだ。

本日は夕刻16時30分からラジオNIKKEI 「マーケット・トレンドPlus」にスタジオライブ出演だった。

内容は以下をクリックください。

2022/03/22/火 16:30-16:45 | マーケット・トレンドPLUS | ラジオNIKKEI第1 | radiko

 

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