土壇場の米民主・共和の攻防戦が始まった。政治日程から元より予想されていたことゆえに驚くほどのことない。今回は17年ぶりの閉鎖はあると見られる。本調子ではない景気が、なんとか政府とFRBのサポートで進んでいる状況ゆえに、以前とは異なるわけで、閉鎖で公務員のレイオフ発生の市場への影響の出方が読みにくい。
民主・ホワイトハウスも共和も「責めは相手側にアリ」と責任のなすり合い、また世論の読み合い(顔色うかがい)の様相だ。
米財政協議は2段構えで、まず新年度(2014年会計年度)の予算協議の行方だが、こちらは本日30日(日本時間明日の午前中くらい)が期限にも関わらず未だ難航している状況。その次は、昨年末から先送りした結果ますます妥協が難しくなっている「連邦債務上限引き上げ」問題で期限が財務省曰く10月17日。議会予算局(CBO)は10月22日から31日の間としているが、巨大組織ゆえに日々のフローも大きく、日を特定するのが難しいようだ。
財政協議のポイントは、「オバマケア」と呼ばれる「医療保険改革法」を巡る民主、共和の理念の真っ向からの対立がある。国民の自主性を尊び「大きな政府」に反対する共和党(中でも保守派を中心とする強硬派)は、国民の大半に加入を義務付ける国民皆保険制度に似た制度自体と政策実行から派生する財政の急拡大に反対を唱えている。法案は既に成立し2014年には完全実行される段階にあるものなのだが。
民主党が指摘するように共和党はまさに戦略的にオバマケアを人質に取ったような要求の仕方をしている。予算案より、より重要な連邦債務上限引き上げ問題は、そもそもそれなくて暫定予算で合意したとしても借金を前提に組まれている予算ゆえに意味を成さないことになる。なのにそれすら妥協が成りたたない。昨年の共和党副大統領候補のポール・ライアンは下院の予算委員長で保守派。強面(こわもて)なのだ。
どちらにしてもオバマケアは廃案にしたかった共和党にとって、戦略的にこの部分で何らかの民主党サイドからの妥協を引き出さないでは引き下がれないのだろう。それでも「オバマケア予算を削りたくない」と言うことで、「ならば何を削る?(共和)」という方向に行けば、削減分野を探して期限を切って予算カットということになる。この状態が「財政の崖」の再来となるのだが、 それはバーナンキが最も嫌がるケースとなる。年末までのFOMCへの影響は避けられなくなる。