亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

FOMCよりも米雇用統計よりも、ユーロの弱さが支配する金市場

2018年05月07日 21時45分00秒 | 金市場

本日は休み明けの長文。もっとも、1日以降、連日NYの動きは追っていた。

日本が連休中の1週間余りの期間に、NY金は5月1日にザラバの安値1302.3ドルと年初来安値を記録した。ただし、終値ベースではかろうじて3月1日の安値を上回った。5月1日はFOMC(連邦公開市場委員会)の初日に当たる日。つまり翌日の声明文の発表を前に、金は売り込まれた。

先週はFOMCの後の週末に4月の米雇用統計の発表と、イベント週だった。結論から言って、その内容にドル相場、より正確にはドルインデックス(DXY)がどう反応するかが、NY金の方向性を決めた。DXYは、ユーロや円、ポンドなど主要6通貨に対するドルの相対的な価格を表す指数で、金価格との逆相関性が強く、それゆえファンドの自動売買プログラムにはDXYが判断要素として組み込まれている。一般的に強いDXYは弱い金、逆に弱いDXYは強い金となる。

実際にNY金が年始からのレンジの高値圏となる1350ドル前後に滞留していた3月26日から4月20日に至る4週間のDXYは、2014年12月以来となる88ポイント台に入るなど90ポイント割れで推移した。この間にNY金は、1369.4ドルと1年8ヵ月ぶりの高値をつけることになった。しかし、その後4月下旬以降DXYは急速に値を戻し、日本が連休中の5月1週目に急騰、わずか11営業日で90ポイント回復から一気に93ポイントに迫るところまで値を伸ばした。その反対側でNY金はレンジ下限まで売り込まれることになった。

このDXYの上昇は、ドルの強さ(上昇)というよりも、むしろユーロの弱さ(下落)によりもたらされたといえる。というのも、DXYは主要6通貨の構成比でユーロが60%近くを占めることから、ユーロ・ドルの動きが大きく反映されることによる。

ユーロはこの2週間大きく売られた。正直って、このタイミングでここまで売り込まれるとは思っていなかった。背景には3月中旬以降、徐々に表れ始めた欧州経済の減速がある。4月に入って以降、中心国のドイツをはじめ多くの指標が減速傾向を強めた。実際にドイツifo企業景況感指数は、117.5と昨年11月に過去最高を更新し、年始1月には117.6とさらに更新。しかし、2月115.4、3月114.7そして4月24日に発表された4月分は102.1へと急落状態となった。景況感という心理指数であり振れ幅が大きくなることはあるが、やはり想定外といえるもの。

ECB(欧州中銀)は、この9月に量的緩和策継続の有無の期限を切っている。年初から4月中旬に至るまで、その9月以降の出口戦略について6月の理事会にて話し合いがされるとの見方があり、当方もそう捉えていた。そのシナリオは、ドイツを含む指標の悪化で先送りとなったとみられる。

4月26日に開かれたECB理事会後の記者会見でドラギ総裁は、指標の悪化は「急激で、予想していなかったもの」とし、足元の状況をどう解釈するかが大事とした。減速が一時的なのか、原因はどこにあるのかを見極めなければ、緩和縮小の議論は進められないという意向を示したものとみられる。市場では、緩和終了の判断は7月に先お切りされるとの見方が台頭、ユーロはさらに売られDXYは上昇ということになった。こうして金は、年初からのレンジの下限まで売られた。

なお、金市場が前のめりに織り込みにかかった“FOMC声明文での利上げ加速の示唆” については、インフレ見通しについて盛り込まれた「対照的な(symmetric)」という一語が今後の方針を示したとされる。インフレ率が(2%を挟んで)上下して2%を多少超えても、FOMCの想定の範囲内であること、したがって利上げペースが急加速するわけではないという理解がされている。結果的に、前のめりの市場スタンスが逆に声明文でいさめられることになったといえる。貿易戦争の行方については、FRBも懸念事項としていることも表面化。難しいさじ加減を求められ、それを実行しているFRB。








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