トランプ大統領による、米国に不利な貿易慣行を改めるために関税を掛けるというより、そもそも強大な国力にモノを言わせ脅しをかけるツールに関税を使うということが足元で行われている。元よりそれは宣言していたこと。
いずれ本来の姿に行きつくのかもしれないが、もともと損得が基盤になっての発想なので足元の混乱は予見できたことではある。しかし、現実となると対応が難しい。
どう変化するかわからないので、決め打ちできない。この不確実性を一番嫌うのが株式市場ゆえに、朝令暮改、二転三転の政策発動に、さすがのウォール街も我慢も限界ということになっている。いまやトランプ政策が景気後退の元凶になるのではとの見方というか流れができ始めており、政権サイドが慌て始めている。
3月6日のNY金は小幅に4営業日続伸した。トランプ政権の関税政策がたびたび変更を繰り返す不透明感の高まりの中で、投資家は狼狽し米株式市場は再び下げ幅を拡大した。リスクオフ(リスク資産回避)センチメントの拡大は、以前であれば為替市場ではドル買いにつながったが、足元では米国経済の後退懸念が高まっていることから、むしろドル売りとなっている
。前日に続き6日もドルは対ユーロを中心に主要通貨に対し売られた。 欧州中央銀行(ECB)は6日政策金利を0.25%引き下げ2.5%とした。同時に米国との貿易戦争や欧州諸国の防衛費増額計画などの財政分野の不透明性の高まりを受け、4月の次回会合で利下げを一時停止する可能性を示唆した。ユーロ・ドルは一時、1.0854ドルまで上昇し、昨年11月以来、4カ月ぶりの高値を更新。日本円も日本銀行の年内利上げ観測もあり対ドルで買われドル・円相場は一時147.31円と、5カ月ぶりの安値(円高)を付け147.98円で終了。ドル指数(DXY)は一時103.761と24年11月5日以来4カ月ぶりの安値を付け104.062で終了した。
一方、米長期金利はリスクオフにもかかわらず不安定な値動きの中で売り買い交錯状態で一時上昇したものの、終盤に低下し4.276%で終了。
いずれの値動きも、かつてのトランプトレードでドルも米長期金利も上昇という流れは変質している。
こうした中でNY金は2900ドルをやや上回る水準でのレンジ相場となった。米国株が急落する折に現金捻出の売りが見られていたが、そうした動きも限定的なものとなっている。2月末に掛けて大きくファンドの買い建て(ロング)の整理が進み、足元で手じまい売りは一巡している。さりとて上値を買う手掛かりもなく、滞留状態にある。
米国内の人員整理の数が増加している。 再就職あっせん会社米チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスが発表した調査で、米企業や政府機関が2月に公表した人員削減数は17万人を超えた。小売り、テクノロジー業界でも人員削減の動きが目立った。連邦政府の削減数は6万2000人以上と、部門別で最大の割合を占めた。トランプ政権が連邦政府の人員削減を進めていることもあり、全体人数は1月から約3.5倍に急増した。民間企業の政府との契約解除、貿易戦争への懸念も影響したとみられる。労働市場の悪化が米経済を下押しするとの見方につながった。
本日は2月の米雇用統計が発表される。非農業部門雇用者数は16万人増と、1月の14万3000人増から若干改善するものの、昨年11月と12月を下回る見通し。2月の失業率は1月から横ばいの4%と予想されている。