ジャクソンホールでの金融シンポジウムは、このところの主役はFRB議長で今回もイエレン議長の講演内容に関心が集まったが、同じ日のドラギECB総裁の注目度は高かった。ユーロ圏でのインフレ率の低迷は広く知られるところだが、そうした状況は早晩抜け出ると言い続けてきたが、そうはならず逆に上昇率が落ちて来ているという現状がある。具体的にはECBは物価目標を2%手前に置いているが、昨年10月以降1%割れが続いている。6月が0.5%だった。今週29日に発表予定の7月の消費者物価指数(CPI)は前年比0.3%が予想されている。仮に予想通りならば、リーマンショック後に経済自体がショック状態にあった時以来の水準となる。
のドラギECB総裁の講演内容は、8月に入ってからの急激なインフレ期待の低下からスパイラル的な景気の落ち込みに対する警戒感を強く打ち出したものとなった。市場では、いよいよ欧州中銀(ECB)も量的緩和策に乗り出す心づもりと受け止められた。またドラギ総裁は、各国政府に財政出動を求めた。ユーロ圏ではドイツ主導の緊縮財政が財政政策のメインストリートとなっている。これまでは緊縮財政をECBが金融緩和で支えるという構図ができていたが、今回は金融緩和と軌を一にした財政刺激策の発動を求めているわけだ。来月以降のドイツの反応が見ものだが、それだけ深刻視しているということだろう。
この発言を受けて起きたのは、株高と同時に債券高だった。ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、ポルトガル、アイルランドなどの国債利回りが過去最低を更新した。つまり価格は急騰した。それにしても6月9日に米国債の利回りを下回り市場の話題になったスペイン債の利回り低下も、今では当時ほどには関心を示されなくなっている。ドイツ債の1%割れも恒常化しそうな感じだ。あのユーロ危機が叫ばれた状況から、大きく改善が見られたわけではなく、基本はカネ余りによるもの。要は、“ひずみ”が溜まっているし、もれからもまだ溜まりそうだ。ただし、この“ひずみ”をどうリリースするか、できなければ先に行ってバブルの崩壊も否定できない。