亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

「一部に08年秋を思い出させたゴールド・スワップ」

2010年07月12日 18時54分25秒 | 金市場
先週は、それまでの米・欧を覆っていた景気減速や財政金融問題への懸念が後退し、世界的に株高が目立った週だった。独立記念日の振り替え休日明けの4営業日の取引でNYダウは511ドル、前週比5.3%の週間ベースで今年最大の上昇となった。前週までは週間ベースで1930年代以来や数十年ぶりといった飾り言葉がつく週間ベースの下げに見舞われていたので180度違う展開といえる。これも現下の“カネ余り相場”の成せる技ということだろう。投資家心理の“振れ”がそのまま株価指標の“振れ”に反映されているわけだ。

このなかで調整局面入りしている金市場も、安値は1185ドルまで見たものの、終わってみれば前週比2.10ドルの上昇という結果になった。週末の上昇は、取引の比較的少ないなかファンドによる買い戻し(ショート・カバー)の動きで上昇した。

ところで7月6日の当欄にてBISにスワップ取引について取り上げたが、この事実判明をきっかけに、どうもその前後の市場では金を担保に差し出さないとならないほど資金取りに詰まっているのかと、流動性危機がぼっ発した08年10月の状況を連想し、警戒する動きがあったようだ。

08年当時、ドルを取れない金融機関やヘッジファンドがドル資金調達のために換金売りの動きに出て一時的に金が暴落ということがあった。その時の苦い経験(国際金融が凍りついたという経験)からFRBを始め主要中銀の間ではドルスワップ協定が結ばれ、調達金利の上昇が見られると予防的に協定が発動されるということになっている。当時、中銀筋もそこまでの事態の発生は予想していなかったのである。足元の予防的措置は、その時の「学習効果」といえるもの。08年秋のような状況が再来するならば世界経済はまさに恐慌入りということだろう(すなわち、中銀連合はスクラム組んで掛る事態を絶対阻止というスタンス)。今回は売却ではないものの、金をめぐる資金調達ということで、慎重な向きの早耳筋は08年秋の再来を連想し予防的な売り手仕舞いを実行した可能性がある。

こうした手仕舞い売りは、必要な人々が必要な量を売ると終わるというのが経験則の教えるところでもあるし、その規模が過去最大だった08年秋の事態もやはり同じだった。

このゴールド・スワップを現在の環境に沿った捉え方をするならば、以前であれば換金売りされていた金を(かかる環境ゆえに)手放さず温存し、一方で緊急ファイナンスの担保に利用というもの。


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2 コメント

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ネットセミナー (こう)
2010-07-13 07:01:23
亀井さん
今度、ネットでセミナーを
するそうですね
よろしくお願いします。
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Paulsonのファンド$2bil解約 (明石のアガシ)
2010-07-13 08:51:16
先週にニュースで古いですが、この6月末で$33 billionあるPaulsonのファンドのうち$2billionの解約があったとのこと。
旗艦ファンドが2007年に52%のパフォーマンスをあげた後、苦難の2008年に7.9%でしのぎ、ヘッジファンド全体が好調だった昨年は6%と低調でした。今年に入り5月、6月で-7.4%と低迷しています。2008年以降投資を行った個人投資家の多くは洗練されていないので、今後、これらの投資家からの解約が9月、12月と続くのではないでしょうか?
ポールソンが金を売ったら買いなんでしょうね。
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