亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

インフレにこだわり、やり過ぎるFRB 

2020年01月10日 23時15分14秒 | 金融市場の話題
イランによる空爆というニュースを受けた反射的なモメンタム・ロボット相場が一巡した。NYコメックスの先物相場で取引の中心は2020年2月物だが建玉(未決済玉)約50万枚(1枚=100オンス)に対し、出来高は80万枚ほどだったので、いわゆる回転が利いたかたちになる。米イラン間で高まった緊張が緩和するに従い、様子見に回っていた筋の益出し売りが足元で断続的に出ている。先物市場のみならず現物由来の金ETF(上場投信)にも見られている。最大銘柄「SPDRゴールド・シェア」の残高は8、9日の2営業日で計14.06トンの減少となっている。

9日はそこに米国側から15日署名のスケージュールが公表されてた米中通商協議「第1段階」について、中国商務省が劉鶴副首相を団長とするワシントン訪問を初めて公表。中東情勢沈静化+米中合意進展の組み合わせによるリスクオンセンチメントの高まりをダイレクトに反映し、米国株式は主要3指数ともに過去最高値を更新。この日講演した米連邦準備理事会(FRB)のクラリダ副議長が、2020年の米経済について楽観的な見通しを示しながらも、インフレ圧力の弱さから当面利上げの可能性がないことを示唆。緩やかな景気拡大と低金利が共存するゴルディロックス環境(適温経済)の持続を連想させ、株高につながった。一方で、S&P500種のPER(株価収益率)は18倍を超えており、割高が否めないのも事実で来週以降本格化する10-12月期の決算発表に注目が集まる。

それにしてもクラリダ副議長が冴えないインフレ率をかなり気にかけている様子がうかがえ興味深い。インフレ率に関し2%目標が「上限ではない」としたのは、FRB内のコンセンサスとして2%を優に超える水準が一定期間続いて初めてホンモノという判断を下そうということ。クラリダ副議長は「下向きリスクが増大している」としたと伝えられている。

やはりこの日講演したミネアポリス連銀のカシュカリ総裁も、「今後半年か1年は金利水準の据え置きが続く可能性がある」としつつも、「インフレが弱い場合、さらなる利下げを支持するかもしれない」としていた。カシュカリ総裁は、ハト派で知られる人物で今年のFOMCで投票権を持つ。

クラリダ副議長、カシュカリ総裁の発言からわかるのは、金融政策は利下げ方向のバイアスがかかっているということ。FRBはやり過ぎるわけだわい・・と。緩和し過ぎの形が過去最高値更新を続ける株式市場ということだと見ている。

本日は注目の12月の米雇用統計。これを書いている間に発表があったが、非農業部門の雇用者数(NFP)は16万人程度の増加予想に対し、14万5000人増となった。失業率は予想通り3.5%と50年ぶりの水準を維持。個人的には前回大きく上振れて26万6000人増となった11月の雇用者増加数に、少し大きめの修正が加えられるのではと思っていたのだが、10、11月合わせて1万4000人と小幅な下方修正にとどまった。12月の数字が少なめに出たので、相殺ということか。前年比3.1%の伸びが期待されていた平均時給は2.9%意外性のある3%割れに。2018年7月以来の低水準。これではインフレ率も上がりにくい。総じて低調な結果だが、市場の反応は鈍い。面白みのない相場。この後に開く株式市場の反応がどうなるか。


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