亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

米雇用統計のサプライズ。金市場、目先の材料は通過か

2015年11月09日 15時19分38秒 | 金市場

「米経済はさらに雇用を生み出すだけの成長ペースを維持するとみている」。これは11月4日に米下院金融サービス委員会の公聴会でのイエレンFRB議長の発言。その上で議長は、“live possibility”との表現を使い12月の利上げがあり得るとした。先週の雇用統計発表の2日前のこと。そして市場が身構えた6日の米10月の雇用統計の発表。前月比雇用者増加数が市場予想の18万人を大きく上回る27万1000人増のまさにサプライズとなった。同時に発表された失業率も前月と変わらずの5.1%予想のところ5.0%に低下となった。2008年4月以来の低水準で、FRBも完全雇用と認める5%割れが視野に入って来た。つまり、イエレン議長が示した方向性を裏付ける申し分のない結果となった。

当然ながら市場は一気に12月の利上げを織り込みに掛ることとなった。発表直後から各市場に大きな変動がみられた。米国金利は急騰。利上げ動向を映す2年債金利は5年半ぶりの水準に上昇。10年債金利(長期金利)も2.3%台へ。並行してドルが買われユーロドル相場は一気に(1ユーロ=)1.07ドル割れ寸前まで上昇。主要6通貨に対するドル指数は、97ポイント台から99ポイント台へ上昇し、今年4月15日以来の高値に至った。この中でNY市場の金価格は雇用統計発表直前の1105ドル台から1100ドル割れに急落。そのまま1080ドル台半ばまで値を切り下げた。6日は、この取引開始早々の大幅な下げで20ドルほど切り下がった水準のまま終日横ばいで取引を終了することになった。NYコメックスの通常取引は前日比16.50ドル安の1087.70ドルで終了。安値は1084.50ドルとなった。

正直言って27万1000人の雇用増を見た際の印象は、金価格は7月24日に記録していた直近の安値1072.30ドルを下回るところまで売られるのではというものだった。結果的には維持し、終り値ベースでも当時の1085.50ドルも下回らずに終了した。まず前日まで6営業日続落ですでに70ドル超、6%もの下げに見舞われていたことがある。10月28日のFOMC声明文発表以降、年内利上げを織り込みながら進行してきた金市場は、ファンドの買い建て(ロング)の見切り売りやETFの解約売りが断続的に出て大幅安に至っていた。そして、この日の雇用統計がとどめを刺す形になった。利上げ観測が一気に高まる状況の中で、7月の安値を維持した点は注目に値する。言い方を変えるなら、この水準を維持できるか否かが当面の関心事となるが、踏みとどまると2点底の確認ということになる。

それにしても10月の27万人超の雇用増は驚きだった。9月分が下方修正され当初の14万2000人増から13万7000人増に下方修正されたが、8月の世界同時株安などで企業のマインドも警戒モードが高まり雇用を手控えた可能性がある。その後、中国経済の極端な悲観的見通しなどが是正される中で、株式市場にも戻りが見られマインドは復調したとするならば、今回の予想外の雇用増は“9月の反動増” ということになるのではないか。つまり11月の雇用増は通常ペースに戻ることになると思われる。FRBとしては、11月分も合わせて総合的に判断ということになるのだろう。この先、米国関連の指標が良くても利上げ環境が整ったことを追認するのみ。目先の材料は通過と見るがどうだろう。この後は利上げ後の経過を見て次の利上げの有無とタイミングに関心が移ることになる。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 12月利上げ方針を周知させる... | トップ | イベント(雇用統計)通過で... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

金市場」カテゴリの最新記事