先週の雇用統計で12月の利上げを一気に織り込んだ市場は、新しい環境を見越した動きを始めているようだ。見方が分かれるところではあるが、ドル高環境を前提にした反応が今週に入り出てきた。ドル高、金利上昇で株の割高感は否めずというのが、まず週明けのNY株の反応。先週は強気の雇用統計発表後にいったんは売られたものの反転上昇し、国内証券関係者を喜ばせたが、週明けにあえなく反落となった。
同時にドル高見通しに対する反応は、商品市場(コモディティ)の売り材料にもなった。
そこに加わったのが、中国減速懸念の再燃。9日月曜日に発表された10月の中国貿易収支は輸出、輸入ともに減少(収縮)。特に輸入は18.8%の落ち込みに。極端な悲観論は後退したものの、内需の弱さを連想させる結果に、金以外のメタルは総売り状態となった。貴金属の中でもプラチナ、パラジウムのいわゆるPGMは金と明暗を分けている。
他ではこのところ鉄鉱石の値下がりが目立ち、こちらはオーストラリアから中国への輸出量の減少を映すものとして捉えられており、中国での鉄鋼需要の落ち込みを示すものとして注目されている。
一方で金には人民銀行の買いが10月も見られ16トン増加。総量も1723トンに増加。さながらロシアに次ぐ“中央銀行版純金積立国”の登場となりそうだ。 9月は香港経由でネット97トンと高水準の輸入が見られ民間需要も堅調が伝えられている。10月の輸入量はどうなったか。
本日発表された10月の中国の消費者物価指数(CPI)も生産者物価指数(PPI)も、CPIは前月比0.3%の低下で前年比1.3%の上昇。PPIの方は前年同月比で44か月連続低下となる5.9%の低下。やはり内需の弱さと過剰設備(過剰生産)問題を表す内容となった。国有企業の改革問題とからむゆえに、供給サイドの調整は進みにくい。
明日は、同じ中国の10月の固定資産投資と鉱工業生産指数の発表がある。物価指数よりこちらの方が市場の反応は大きくなると見られる。