先週のNY金は前週末比21.40ドル、0.8%安の2659.60ドルで終了。週を通して米連邦準備理事会(FRB)高官の発言機会が連日予定されており、同時に11月米雇用統計やISM製造業景況指数など重要経済指標の発表も重なるなど手掛かり材料が豊富な週でもあった。にもかかわらず、値動きが続き方向感に乏しい週となった。滞留の中心価格帯は2660ドル台で、上値はおおむね2680ドル、下値は週後半に向けて切り下がったものの、2640ドル台に集約された。つまり2660ドルを挟み上下20ドルのレンジ相場となった。
注目指標の11月米雇用統計は、非農業部門の雇用者数が前月比で22万7000人増と、市場予想(21万4000人増)を上回った。10月分は1万2000人増から3万6000人増に上方修正された。一方、失業率は前月の4.1%から4.2%に上昇した。
失業率の上昇もあり12月利下げは想定通りとの見方が高まった。
FRB高官の発言も、慎重姿勢を示すものの目先の利下げ継続方針を変えるものではないと受け止められた。
ボウマンFRB理事は、現実的なインフレリスクがなお存在しているため、FRBは今後の利下げを判断するにあたり慎重を期す必要があると指摘した。先週のFRB高官の発言の中でもっともタカ派的なものだった。同理事は9月の連邦公開市場委員会(FOMC)での0.5%の利下げに理事として反対票を投じたことで知られる人物。
クリーブランド連銀のハマック総裁は、経済全体の状況は引き続き利下げペースの鈍化を示唆しているとし、FRBが利下げペースを緩める時期に達したか、その時期に近づいている可能性があると述べた。
景気を過熱も冷やし過ぎにもならない中立金利の水準に関しては、議論が続いている。タカ派的な発言をするFRB高官の間では、中立金利自体が切り上がっているとの見方が多い。このあたりは、来週のFOMCで示されるメンバーによる金利予測が注目される。
当初は金利低下の幅を大きめに想定していた金市場だが、10月に入るあたりから利下げに慎重な見方が増えており、前提が変わっている。
なお、先週は国際的な金の広報調査機関ワールド・ゴールド・カウンシルが、10月単月の新興国中央銀行のネット購入量が60トンと発表したが、中国人民銀行は11月に金準備を増やしていたことが判明した。
7日に発表された11月末の外貨準備統計では7カ月ぶりに増加し、保有量は16万オンス(約5トン)増の7296万オンス(約2269トン)となった。2022年11月から24年4月まで18カ月連続で金の保有量を増やし、5月以降は積み増していなかった。
こうした中で8日には中東シリア、アサド政権の崩壊が伝えられた。一連の中東およびウクライナ情勢に連鎖する政治的変化だが、さらなる中東情勢の流動化につながる可能性があり注視が必要だ。買い手掛かりではある。