昨日予定されていたバーナンキ議長の講演。カンザス連銀主催の会合でのもので、「米経済はわれわれが望んでいる状況から程遠いことは依然明白」としたと伝えられた。先週末の雇用統計を受ける前から内容は固まっていたと見られるが、それでもあの数字は配慮せざるを得なかっただろう。
その話は別として、講演後の聴衆との質疑応答で、各国中銀の金融政策について聞かれて「より力強い金融市場と輸出拡大を通じて、他国に追加的な支援を提供している」と答えたと伝えられる。質問者の頭には、時節柄日本銀行のウルトラ緩和があってのことだろう。バーナンキの答えは、今回の行動を明確に支持するものといえる。
実は大恐慌時代の財政金融政策を改めてチェックする機会があったが、バーナンキ議長は知られているように大恐慌の研究で名が知られた人物。大恐慌時、為替切り下げ競争が(いわゆる近隣窮乏化政策であり)恐慌の深刻化を招いた」という通説から離れ、むしろ恐慌から抜け出すために(為替の切り下げは)必要だったという立場を取っている。恐慌とはデフレの行き過ぎた姿だが、為替変動は当事国にとって表裏の関係にあるわけで、それ自体が世界的にデフレをもたらすわけではないとする。
当時、為替の切り下げ競争は、金本位制の停止か、あるいは金の評価を上げることで可能になったわけで、いずれも通貨発行量の増加につながりデフレ(恐慌)から抜け出す有効な政策との解釈となる。いずれにしても、デフレは貨幣的要因なので、ばら撒くことが正しい政策であって、付随して円安が進むのは二義的なことであって非難するにあたらない・・・ということか。
加速したドル高円安に対し今回は米国サイドか非難の声や牽制発言が起きないまま、ここまで来ているのだが、オバマ政権内部ではバーナンキ的解釈が受け入れられているのだろう。