公開された注目のFOMC議事録要旨の内容は、どちらとも取れる内容で、9月に向け煮詰まった話し合いがされたのでは、との見通しは外れ、不透明感を残す内容となった。
9月の利上げに対する明確な兆候を一切見せることはなかった。「大半(の委員)は政策引き締めに向かうための条件がまだ整っていないと判断したが、条件がそれに近づきつつあるとも指摘した」とされた。
この一文の前半部分を重視するか後半に重きを置くかで、読みも変わるような内容。結局、金市場参加者の中には、9月利上げは遠のいたと受け止める向きが多かったようだ。実際に議事録公開後の金市場は、買いが先行し1130ドル台に水準を切り上げることになった。
ただし、金の上昇は議事録公開前から先行して起きていたもの。結局、足元で不透明感が増している世界経済や不安定な金融市場の動向を映したものと見られた。
まず先週の中国による人民元の切り下げが、新興国の間で通貨の切り下げ競争のような環境を生み出していること。さらに切り下げに着手せざるをえない程、中国の減速感も高まっているとの悲観論が広がっていることがある。19日も産業用メタルの代表格「銅」の下落は止まず、ついに節目の5000ドルを下回ることになった。また原油も下げ止まらずWTI原油は40.90ドルで取引を終了し、2009年3月以来6年5ヵ月ぶりの低水準に。商品市況全般を示す代表指数ロイター・コアコモディティCRB指数は193ポイントと直近の安値をさらに更新し13年ぶりの低水準に沈んでいる。
商品指数の低下を人間の体に例えるならば、世界経済は低体温症のような感じであり、代謝も落ちているイメージとなる。先行きを懸念し欧州はじめNY株式市場も低迷の様相を深めており、デフレを思わせる状況といえる。それを金市場では、FRBの利上げが難しい環境であることを嗅ぎ取ったファンドをして、静かにショート(空売り)の手仕舞い(買い戻し)に向かわせ、水準訂正のような動きにつながっているということになる。