亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

FRBの政策転換を難しくする政治ショーと金の行方

2013年10月02日 23時34分33秒 | 金市場

初の試みとして今日の昼に執筆し、夕刻に時事通信から配信された上記のタイトルの一文(レポート)を掲載してみましょう。

やや、長文となります。


以下


「FRBの政策転換を難しくする政治ショーと金の行方」

アナリストの目  亀井幸一郎

米国の新年度(2014年会計年度)の予算協議は、民主党、共和党双方とも歩み寄る気配もなく時間切れとなり米政府機関の中で重要性の高いところ以外は10月1日の新年度入りから閉鎖されることになった。
民主党およびホワイトハウスも共和党も「責めは相手側にあり」と世論の動向をうかがいながら責任のなすり付け合いをするばかりで、下院(共和主導)と上院(民主主導)双方が回された法案を自分たちの主張を盛り込んだものに修正して相手に渡すということを繰り返すばかりで、建設的な話し合いは行われず時間切れとなった。

政府機関の閉鎖が決まった10月1日のNY株式市場は、懸念された混乱は見られずダウ始め主要指数は軒並み上昇となった。ドルの下げも限定的なものとなった。すでに閉鎖を織り込んでいたということだが、一方で基本的に閉鎖は長引かないという楽観的な反応といえよう。その中で金は、NYコメックスのフロア取引早々に出されたまとまった売り注文に急落状態となりストップ・ロスの売りを誘発し1300ドル大台割れとなった。海外通信社は「リスク回避の金売り」と報じ「金より現金」というトレーダーのコメントを報じていたが、株式市場の楽観からは離れた内容で違和感のあるものだった。実情は、目先の投機的な動きを起こすことで一儲けというヘッジファンドの売り攻勢による下げであって、内容的には4月中旬また6月下旬の急落時にも見られた投機的攻撃による急落といえた。

2年以上前から米国議会は「決められない議会」として、その政治的リスクを指摘されてきた。2年間の会期の中で少なくとも300本以上、多い時代には700本も成立した法案が上下両院で勢力図が異なる“ねじれ状態”の中で2011~2012年には200本に満たないという事態に陥っていた。それでも何とか妥協を重ねてきたのだが、中間選挙を1年後に控え、対立の溝は深まっている。こうした状況は、かつてそれ自体が金融経済のリスク要因として金市場の材料になった経緯がある。

この上は閉鎖状態がどれだけ続くのかということだが、クリントン時代の時は、95年11月に5日間というのがあり、その直後にも2回目の閉鎖がありこちらは95年12月16日から96年1月6日まで続いた。長引けば、それだけダメージが大きくなるが、今回はこの状況の中で10月17日がやり繰りの限界とされる「債務上限の引き上げ」の期日を迎えることになる。「オバマケア」に代表される民主党の「大きな政府」に異を唱える共和党のスタンスは、選挙での政治的優勢を狙った戦術ということよりもむしろ理念というべきもので、妥協の余地がないのが話を難しくしている。対する民主党も念願の国民皆保険制度に近い「オバマケア」の実行は理念といえ、こちらも譲れない。

さりとてすでに新規の国債発行ができない米国政府は、このままではデフォルト(債務不履行)は避けられない。市場もそこまでの混乱は政争とはいえ起こさないだろうという見方の中で動いている。おそらく間際までもつれ、株価の急落など金融市場の混乱に背中を押されて暫定法案を成立させることで結論は先送りとされるだろう。
結局、この不透明要因を抱えた環境の中で10月29-30日のFOMC(連邦公開市場委員会)は量的緩和策の縮小をさらに見送ることになるのではないか。仮に民主党が一部にオバマケア関連予算を含む大幅歳出のカットを条件に「債務上限引き上げ」が成ったとしても、それは再び「財政の崖」論議を巻き起こすもので、先送り以外の何物でもない。実は、バーナンキFRB議長が嫌うパターンがこの大幅歳出カットを伴った決着といえる。同時に先送り自体が、格付け会社の関心事となっており米国債の格付け見直しにつながる可能性がある。

さらに、緩やかながら回復が続いている米国景気だが、景気循環からはピークをつけ下降局面にある可能性がある。

 いずれにしても我々がいま目にしている政治ショーだが、これ自体がFRBの政策転換を難しくさせる要因であって年内は元よりバーナンキ議長の在任中に縮小策に着手できない可能性を示すものと捉えている。つまり投機的攻撃にしても何にしても、1300ドルを割れ更に下げる金は買いに分がありと考えている。

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