プーチン大統領による親ロシア派武装勢力が実効支配するウクライナ東部の一部地域の独立の一方的承認と、同地域の平和維持活動のために派兵するという奇手。これにいわゆる西側が、どう対応するのか、その対応の程度と世界経済への影響を見極めようという様子見の動きが市場で続いている。
そもそも、一方的に独立を認めた地域の地理的な範囲も不明確で、制裁発動で該当する地域との交易や金融取引を遮断するといっても、ルガンスク、ドネツク両州を対象とすれば、そのままロシア側が両州全体を抑えようとしているということを認めることになるが、以前の「ミンスク合意」の地理的な範囲とは大きく異なることになる。したがって特定個人の資産凍結やその他金融取引を止めることはまだしも、他の制裁行為は不透明といえる。実態はこれから探るということだろうが。制裁実施と宣言しないわけには行かないのだろう。
米国が(カナダも)挙げている2つの主要銀行というのは、ロシア第5位のVEBバンクと8位のプロムスビャジバンクの2行で、米企業との取引を認めないというもの。それにロシア国債の取引を禁止するというもの。現時点でロシアのエネルギー分野への影響を避ける形で、これは言うまでもなく現時点でそこまで踏み込めば、こちらにも火の粉は降りかかるわけで、強力な制裁は温存しているということになる。 本気といえば語弊がありそうだが、本気にやれば双方傷むので、いわばチキンゲームのような形と言えそうだ。
その主導権はプーチンと見るが失敗した際の自身の政治生命にかかわる話になりそうだが、ロシア専門家でもないのでこれはゲス(guess)ということではある・・・。インフレが騒ぎになっているこちら側の状況をロシアサイドは把握しているわけで、この点で弱みは握られている。
もっとも、今回の宣言で「ミンスク合意」は瓦解しており、今後、親ロシア派が州全体に影響を及ぼすべく行動を開始すれば、現行では済まない大規模な軍事衝突がウクライナ軍との間で起きることになるのだろう。 このままこう着状態となり、双方の睨み合いが長期化という流れは、大規模な軍を展開しているロシアを思えば考えにくいのだが、果たしてどうなるか。
この足元の地政学リスクは無視できない厄介ごとという感じだ。目先の市場はそれでなくとも。FRBの利上げサイクルの開始とそれに伴った引き締め強化策の着手という、イベントが控えており、もともと不安定な環境に突入しているわけで、来週以降は判断材料となる重要指標の発表が控える。今週も、明日は数名のFRB関係者の講演など発言が予定されており、25日はインフレ関連の指標(PCEデフレーター)の発表を控える。
米国株式はナスダックが早々に調整局面入りしているが、22日はS&P500種が直近の最高値(1月3日の終値)から10%超下落し、調整局面に突入した。金市場の方は、ここまで先物市場で買い付いたファンドの利益確定売りが出て、それでも1890ドル前後までと下げは限定的なものとなっている。金市場は、このまま、こう着とは考えていないのではないか・・な。
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