トゥキュディデスの

2013-12-09 17:26:48 | 

「歴史」(岩波文庫では「戦史」)が、ちくま学芸文庫から復刊されていた。本屋さんで平積みになっていたにゃ。

 読みどころは多い。まず、ペルシア戦争の後日譚。プラタイアの戦いでギリシア軍の指揮を執った、スパルタ人のパウサニアス。ペルシア戦争といえば、テルモピュライの戦いで全滅したスパルタ軍のエピソードが有名だが、パウサニアスはよりによってペルシアと内通し・・・・・・。
 スパルタといえばスパルタ教育だが、「純粋培養」の弊害なのか、スパルタ人は敵国に簡単に買収されてしまう。また、同盟を組む他のギリシア人に対して尊大な態度をとって、顰蹙を買ったりも。パウサニアスはそのいい例だ。

 そして、アテナイの民主制の混乱ぶり。有力な指導者のアルキビアデスを、2度も追放してしまう。民主主義はしばしば画一主義に陥ってしまう、というのは正しい。一人一票の枠を超えた強烈な個性、というものが許せないのだ。

 あとは、大量殺人を正当化するための、さまざまな弁論。知性の暗黒面が、赤裸々に暴き出されているのにゃ。

 この本に神は出てこない。そこが、ヘロドトスの「歴史」とは違う。

 オバマ大統領は、どうしてシリア攻撃を断念したのか。この本を読めばわかる。「戦争の規模は、軍資金の額によって決まる」。
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