リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

S.L. ヴァイス:メイキング・オブ・ミッシングパート(3)

2020年09月20日 14時59分02秒 | 音楽系
前回の1、2小節のフレーズ、全曲を通じて一番迷ったところです。実は今も迷っています。(笑)1小節目からヴァイオリンを鳴らして行く方法もあるのですが、やはりカノン式に追いかけっこした方がカッコいいでしょう。

説明がわかりにくかったかもしれませんので、補足説明です。



1、2小節目のそれぞれ3拍目、4拍目はバスが異なりますので(=ハーモニーが異なる)、リュートパートのメロディをそのままヴァイオリンパートに持ってくるわけには行きません。そこで黄緑で囲った部分のように少し和音に合うように変形+装飾的なラインに変更しました。



3小節目の1、2拍はそれまでの小節の1、2拍と同じバスです。この作りがなかなかの曲者です。ヴァイオリンパートで同じフレーズを3回続けるわけにはいかないので、新しいフレーズを書きました。これには少しあとに出てくるモチーフを使って統一性を持たせています。リュートパートの10小節目に出てくるモチーフです。このモチーフはヴァイオリンパートの8小節目でも使使うことになります)

4小節目から新しいフレーズが始まります。ここではヴァイオリンが1拍遅れのカノン風の旋律を展開していき、それが6小節目の2拍目まで続きます。(下の赤線のところまで)



このようにしてヴァイオリンとリュートの音が重なると、リュートが隠れがちになるので、いっそ4小節目から7小節目の3拍目までヴァイオリンのパートをお休みにするという方法もあります。でもさすがにお休みが多すぎて復元版としては芸がないように思います。またこの部分にメロディを書いても不統一なモチーフがたくさん出てくるのではシロウトっぽすぎます。

(つづく)

S.L. ヴァイス:メイキング・オブ・ミッシングパート(2)

2020年09月19日 20時59分29秒 | 音楽系
さてそれでは早速はじめの2小節を見てみましょう。



このパートにヴァイオリンのパートが加わるわけですが、1小節目から入るのか、2小節目から入るのかはたまた3小節目以降なのか、なかなか悩むところです。

リュートのパートをよく見てみますと、1小節目は最上声部がメロディックなのに対して、2小節目は通奏低音みたいな動きをしています。そこで、ヴァイオリンのパートは2小節目から入ることにしました。

ではどういうメロディにすべきか。よくあるのはリュートパートの1小節目のメロディ(最上声部)を追いかける(カノンみたいに)パターンです。1小節目の1,2拍と2小節目の1,2拍はバスが全く同じです。しかしそれぞれの3,4拍はバスが異なることから、単純に追いかけるわけには行きません。


(リュートの1小節目最上声部は八分音符で刻んでいますが、これは音の伸びる楽器だとロングトーンとして扱います)

もうひとつ考えてみました。今度はリュートのメロディをそのまま追いかけないパターンです。



これもなかなか行けると思いますが、今一つ必然性がない感じもします。

第三の方法も考えてみました。1番目のメロディは(ヴァイオリンパートの)2小節目の3,4拍が(リュートパートの)1小節目の3,4拍とあまり関連性がないのが難点なので、ある程度はリュートパートのメロディラインとの関連性を持たせたものです。



こちらの方がなんか必然を感じさせるので、このメロディに決定!

(つづく)

貝供養

2020年09月18日 12時22分15秒 | ローカルネタ
その手は桑名の焼き蛤で知られる当ブログではなく桑名では、日常的にしじみ、あさり、蛤などの佃煮を常食する人が多いです。市内には貝なんとかという屋号の貝類の佃煮屋さんがたくさんあります。

一番有名なのは貝新ですが、貝新を名乗るのは、「新之助貝新」「貝新新七商店」「新九郎貝新」「貝新フーズ」があります。この中で新之助貝新が一番有名で地方(関東、九州など)にも支店があります。ただまぎらわしい名前もあって、東京にある「貝 新三郎」という店は四日市の業者さんがやっていて、桑名の貝新とは関係がないようです。貝新以外にも、「貝藤」「貝茂」「貝増」「伊勢しぐれ」などがあり、これだけあるのに皆さん繁盛しているようですから、桑名の人は貝の佃煮をよく食べるようです。

感謝の念を込めて「貝供養」も行っているようです。今朝の新聞チラシです。



市内の専正寺には文政6年(1823)建立された「蛤墳(こうふん)=貝の供養碑」があり、次のような歌が刻まれています。

あまおふねのりのみ声にはまぐりの貝の耳にもとめてしのばむ 一雲山人行業

セールは一週間もありませんので、忘れないで買いに行かないと。(笑)


S.L. ヴァイス:メイキング・オブ・ミッシングパート(1)

2020年09月17日 18時56分41秒 | 音楽系
ヴァイスの重要な作品が収められていることで知られる大英図書館蔵のAdd MS 30387写本(ロンドン写本)には3曲のコンチェルトが伝えられています。これらのタイトルにはいずれもタイトルに「フラウト・トラヴェルソとリュートのための」という内容の文言がありますが、これらのコンチェルトはいわゆるイタリアン・コンチェルトではなく、それぞれの楽器が協奏的に掛け合うという意味でのコンチェルトです。ヴァイスと同時代および彼の次の世代の時代の作品にはこのようなスタイルがよく見られます。

3曲のコンチェルトはそれぞれ次のような作品です。
1.変ロ長調でヴァイス氏作の表題
2.変ロ長調でジギスモンド・ヴァイス作の表題
3.ヘ長調でS.L.ヴァイス作の表題

1.はロンドン写本では最終楽章の44小節以降がありません。これと同じ曲がドレスデン写本でリュート二重奏として伝えられていますが、こちらは最終楽章まですべて残っています。ただ残念なことにリュートのセカンド・パートは伝えられていません。

2のジギスモンド(ジギスムント)はヴァイスの弟で、1690年頃の生まれで1737年に没しています。

今回私が復元したのは、3.のフルートパートです。3.を選んだのは、はっきりとS.L.ヴァイスと書かれているからで、1もひょっとしたらS.L.ヴァイスではない可能性があるからです。

この曲の復元パートは2016年にヴァイオリン用として作りました。その後本来のフルート用も作成しましたが、今回10月のコンサートで演奏するためにヴァイオリン用のものを何か所か書き直しました。今回ブログでご紹介していくのは、この「新訂」ヴァイオリンパートです。(もちろんリュートパートも紹介していきますが)なおヴァイオリン版とフルート版は音域の調整があるだけで基本的には同じものです。

それでは次回は第1楽章のご紹介となります。

田村厚生労働大臣

2020年09月16日 15時52分59秒 | ローカルネタ
菅内閣が今夜発足します。政治のことはよくわかりませんが、手堅い布陣でときどき話題になるトンデモ大臣はいないと言われています。ITを普及する省庁のトップがコンピュータを使ったことがない、というほとんどマンガのような方とか防衛のことは全くシロウト以下というような方は一切ご免です。

新内閣は各派閥からバランスよく入閣していると言われていますが、総裁の座を争った石破氏の派閥からもひとり入閣しています。三重1区選挙区から出ている田村憲久氏です。氏は伯父の田村元氏の引退に伴い、その地盤から出馬して現在8選を重ねています。氏と別に面識があるわけではないのですが、実は氏が政界に打って出るという初陣式のパーティーに呼ばれたことがあります。

場所ははっきり覚えていませんが、松阪市にほど近い割と普通のレストランだったような気がします。氏の後援会に入っている知り合いから、出陣パーティの余興で何か演奏してくれないかと依頼されました。私は快諾し、何を演奏しようかと考えましたが、ちょうど新しいテオルボを買ったばかりだったので、それを使うことにしました。今から30数年前のことです。

演奏した曲は覚えていませんが、たぶんピッチニーニのチャッコーナあたりを弾いたような気がします。政治家の出陣パーティでテオルボの演奏なんて滅多にないことですが(実際後にも先にもそういう依頼はありません)今から思うとすごい取り合わせです。田村氏はまだ若く初々しく、ジーンズを穿いて登壇、挨拶をされていました。新大臣はそのときのことをまだ覚えてらっしゃるのでしょうか。

ライブ録音

2020年09月15日 21時48分05秒 | 音楽系
最近は音楽を聴く場所もステレオセットが鎮座しているリビングだけでなく、車の中、パソコンにつないだミュージックインターフェイスからヘッドフォンで聴くというように、自分の中でも多様化してきました。音源もCDを買わないで、多様なところで聴けるようにとmp3などのデータで買うことも増えてきました。

そんな中で久々にCDを買いました。芥川也寸志の交響曲第1番と伊福部昭の「サロメ」がカップリングされた一枚。昨年の録音ということで興味がありましたので購入しました。ずっと聴いていき、交響曲第1番の第4楽章が終わりました。とその瞬間拍手が沸き起こりすかさず「ブラボー」の蛮声が・・・確かにライブなのでお客さんは拍手もしますし、ブラボーおじさんは蛮声を張り上げます。でもCDにするのでしたら、そういうのは入れないでほしいです。コンサートは1回きりですが、CDは何度も繰り返して聴きますので、そのたびに拍手と蛮声を聞かなくてはならないのはとても苦痛です。

パソコンのアプリでその部分以降を切り取ることは可能ですが、曲が終わってすぐに拍手+蛮声が入っている場合は、音場が突然変わりますので少し不自然になります。最近は経費の問題もあるのでしょう、スタジオとかホールでのセッションを録音することが減ってきましたが、ライブでも録音する場合は観客に曲が終わっても拍手もブラボーもなしに静かにしているよう要請すべきです。拍手を野放しにしたプロデューサーもそうですがブラボーおじさんたちもホントにデリカシーに欠けます。特におじさんたち、このコロナ禍以降の新しいコンサートの聴き方として、今後はライブ録音があるなしにかかわらず黙って手を叩くだけにして欲しいものです。

やさしい日本語

2020年09月14日 19時03分41秒 | 日々のこと
新聞によりますと、防災や医療の現場で一般的な日本語より平易な「やさしい日本語」を使う動きが広がっているそうです。日本に住む外国人のために例えば、暴風は「風(かぜ)が強(つよ)くなります」と言い換えて伝えている県もあるとか。

日本語が不自由な外国人のためだけでなく、日本語が堪能な人向けにもできるだけわかりやすい表現を使ってほしいところです。以前市内の道路標示に「この先道路幅員狭隘に付き通行不可」と書いてありました。どういう意味かな?って考えながらその先に進んでいくと通れなくなります。こんな漢文みたいな表示は超不親切です。

一般的には漢字の言葉より、和語(やまと言葉)を使った方がわかりやすくあたたかい感じがします。「絵画の才能がある」と言うより「絵ごころがある」と言った方がなんか相手に寄り添っている感じがしますし、これの否定形で「絵画の才能がない」と言われると身も蓋もないですが「絵ごころが少し欲しい」くらいだともうちょっと絵画に親しんでみようかという気も興ります。

最近は普通の日本語あるのにやたらとカタカナのことば(大体は英語由来)を使う傾向もあります。「サステナブル」とか、トランプ大統領がよく使う英語そのままに「ディール」なんていわずに、持続可能、取引きと言えばわかりやすいと思います。英語由来のカタカナ語はまず英語を母国語とする人にとってすぐには分からないでしょうし、日本人も知らない人は知りません。

「やさしい日本語」とは、普通の日本語よりも簡単であり外国人にもわかりやすい日本語のことで、一定の定義もあるそうですが、外国人にも日本人にも、相手に寄り添ったわかりやすい日本語表現が本当の意味の「やさしい日本語」だと言えます。

ドコモ口座

2020年09月13日 19時18分44秒 | 日々のこと
昨晩のテレビ番組で、たけしが「オレ、初めはドコモロ座かと思ってた」なんて言ってましたが、私も「ドコモロ座」ってどっかの劇団のことかなって思っていました。

口座から預金を盗まれた銀行のうち、大垣共立銀行に私も口座がありますので、チェックしてみましたが今のところ大丈夫でした。あと三菱UFJ銀行にも口座を持っていますが、こちらの銀行はもともとドコモ口座とはタイアップしてませんでした。ドコモ口座はあぶないと判断した結果かも知れません。でももしそうなら早く言って欲しかったです。

この事件はなんかドコモだけが会見で頭を下げていますが、銀行にも非があります。どっちがより悪いかと言えば、最終的にお金を引き出すことになる銀行の方が悪いように思えます。銀行さえしっかりしていれば、たとえドコモ口座にスキがあっても被害はなかったはずですから。

以前三重県内の地銀のひとつに口座を開設し、WEBで取引(インターネット・バンキング)ができるようにしました。そのWEB口座に早速アクセスしてみましたら、なんやら初めてホームページビルダーで作ったようなお粗末なページが現れました。エーっ、今時金融機関でこんなんあり?と思いました。本人認証も専用のパスワード発生カード(専用のハードウエアで毎回異なるパスワードを発生させる)もなく一般のメールでやりとりするだけでしたので、セキュリティに不安を感じすぐ預金を引き出し使うのを止めました。

十数年前に作った香港のHSBCなんかその当時からパスワード発生器(カード)がありましたし、今ではそれが三代目になっています。古くなると香港から新しいのが送られてきます。日本の銀行でも三菱UFJ銀行とか三井住友銀行などでも同じようなパスワード発生カードがあり、これで本人認証をしますが、被害にあった銀行ではこういうシステムは取り入れていなかったそうです。パスワード発生カードがあっても、悪い奴らが頭をしぼれば預金を騙し取られる可能性はゼロではないですが、それを人に渡さず情報も漏らさない限りは絶対に安全です。

今回の事件で、大垣共立銀行など何行かはドコモ口座に入金できない措置を取ったそうですが、まだそのままにしているところもあるようです。さすがにドコモは新規のドコモ口座開設は停止しましたが、すでに開設されているドコモ口座はまだ使えるようです。なぜそうしているかというと「現在も何千、何万件の取引があるのでそれは無視できない」ということですが、これって犯罪がまだ進行中ということですよね。それにまだ発覚していないものも併せれば、相当の被害が出てきそうです。こういうのってお上がすぐに指導に入るのでは?金融庁あたりでしょうか。

地銀のセキュリティに対する考え方の甘さが今回の事件の根底にあるように思えますが、そもそも銀行は信用で成り立っているものです。セキュリティ対策をする体力がないというのでは済まされません。今回の件は日本のデジタル化の遅れ、あるいは意識の低さを象徴しているかのような事件です。




ついに我が家にも!?

2020年09月12日 19時39分38秒 | 日々のこと
用事から帰宅して、ふと郵便受けをみましたら、何やら小さい郵便物が届いていました。横幅がが10cmくらいの白っぽい袋です。厚さは1cmくらいで軽量です。どこから来たのだろうと表面を見てみましたら「中国郵政」の文字、「郵」は中華人民共和国の簡体字です。ムムム!これはもしや?



最近中国から植物の種が送られて来たというはなしをよく聞きますが、ついに我が家にも届いたのかと思い、もし種だったらどう処理しようか、裏の庭に蒔いておこうかと思考が頭の中を駆け巡りましたが、表面をじっくり見ましたら「card reader」の文字が。

思い出しました。家内のマイナポイント申請のためのカードリーダーをネットで注文したのでした。家内はiPhone6なので、スマホを使ってマイナンバーカードの読み込みができません。従ってPCで申し込みをしなければと思い注文しました。



マイナポイントで最大5000ポイント貰えるのですが、カードリーダーに五千円も六千円も使っていたのでは元も子もありません。もっと安いものはないかと思って探していたら500円のものがアマゾンにありました。レビューを見ましたら問題なく使えるというものが多かったのでダメ元で注文してみました。16日頃に到着と言われていましたので、予定よりずいぶん早く到着したわけです。

でも考えてみれば私のiPhone8を使って申し込めばよかったのかなということに今ふと気づきました。私のiPhone8が別のマイナンバーに紐ついてしまうような気がしたのですが、冷静に考えるとどうもそれはないような感じがします。だとするとわざわざカードリーダーを注文したのはトンマな話ではあります。ま、500円のものですから、来年の確定申告のときに活用することにしましょう。(笑)

桑名六華苑ミニコンサート秋(2)

2020年09月11日 20時12分23秒 | 音楽系
なんでも六華苑の運営は部署が変わって福祉関連の所になったそうです。職員の方もかなり入れ替わったと聞いています。そのせいかどうかわかりませんが、このミニコンサート、年2回が1回になるということを春頃に伝えられました。本当は今年から1回になる予定でしたが、すでに演奏家の日程を決めてあったので、無理を言って2回にしてもらったところ、新型コロナ禍で春のコンサートがなくなり結果的に1回ということになりました。

福祉がどのように文化的あるいは芸術的活動と結びつくのかは、きっと私には理解不能な高遠かつ複雑な理論的構築がなされているのだと思います。今年も近いうちに桑名市内各家庭に配布予定の「あいりす」で広告していただく予定です。ちょっとフライングですが、こういう感じになります。



A4両面の「裏」です。字が小さく見つけるのも大変なので、どこにあるかをお教えしますと、左上にある7cm x 3cmの記事です。どこにもコンサートと書いてないので、旅行の案内と誤解されそうですが、わかる人にはわかります。このように内容もはっきりわからないし目立たちにくいのは実は新型コロナ対策なのです。例年多い時だと100人近くの方に来ていただいていてすっかり市民に定着しているこのコンサートですが、新型コロナ禍にあって100人も来ていただくと大変困るからです。

ちなみに昨年まではこんな感じで、約5倍の大きさで紹介していただいていました。2018年の春のコンサートの案内です。ちなみに「あいりす」は昨年まではA3二ツ折4ページでした。



六華苑のコンサートのプロデュースをさせていただいてはや14年を超え、それなりに人気があると密かに思っています。聴きに来てくださる市民の方、演奏してくださる演奏家の方、場を提供していただいている六華苑、そして及ばずながらプロデュースさせていただいている私の四者があってはじめて成り立つ当ミニコンサートシリーズ、大切にしていきたいものです。