Pの世界  沖縄・浜松・東京・バリ

もの書き、ガムランたたき、人形遣いPの日記

楽しいソーダ

2009年01月07日 | バリ
 インドネシアに来てこれだけは飲みたいと毎回思うものが、ソーダ・グンビラである。日本語にすると「楽しいソーダ」となる。この飲み物、1984年に最初に体験して以来、私が今宵なく愛する飲み物となったのだった。
 この飲み物を詳細に説明すると次のようになる。まず空のグラスの底に甘い練乳を1~1.5センチ程度入れ、その上に赤、あるいは緑の甘いシロップを静かに入れる。シロップはたいてい2センチ程度である。そうするとグラスの底に白、その上に赤あるいは緑の層ができる。このグラスとボトルに入ったソーダを使って、ソーダ・グンビラが誕生する。
 ここから先は飲む側がどのように楽しむかである。まず、美しい色が二層をなすグラスを見て楽しむ。これが重要で、ワインでいえば色を見るようなものだ。じっくりとそれを楽しんだのち、ボトルの半分ほどのソーダ水を静かにグラスへと注ぐ。すると、美しい三層ができるのだ。上から、透明な泡が踊るソーダ水、色つきのシロップ、そして白い練乳。注ぐ楽しみを味わい、再び三層となった飲み物を見て楽しむ。しかし楽しみはまだまだ続く。
 ドリンクなのだから「飲む」楽しみがあるのは当然だ。まず、ソーダ水だけを軽くストローで吸う。あっさりした炭酸を味わったあと、上の二層の部分だけを軽く混ぜるのである。この時点で三層すべてをかき混ぜると楽しみが一つ減ってしまうのだ。色つきシロップと炭酸水を混ぜると、甘いサイダーのような味になる。これが旨い。存分にこの味を堪能したのち、ボトルに残った炭酸を少しグラスに注いで、練乳部分まで混ぜ合わせて、今度はすべてが混ざった味を楽しむのである。この味がまた最高であり、楽しみも最高潮に達するのだ。注意すべきことは、上手に残ったソーダをグラスに足していくことである。少しずつ薄まり、甘さがなくなっていく過程を楽しむのもまたこの飲み物の楽しみである。
 さて、私のこの話を聞いた調査地の友人が、「40代の男が一人で、ニヤニヤしながらそんな飲み物を飲んでいるのを店の人がみたら、ちょっと普通じゃないと思われる」と言っていたが、それでも好きなものは好きなのである。楽しいものは、楽しいのである。


すべてジャワから

2009年01月07日 | バリ
 大編成のガムラン音楽にとって、ゴングという楽器は音楽的にとても重要な役割を果たしている。ゴングなくしてはガムラン音楽は成り立たないし、神が宿ると信じられるこの楽器には、たくさんの供物が捧げられたりする。神に近い楽器なのだ。
 ところがこの大きなゴング。もう30年近くバリでは作られていない。すべてジャワ島で作られ、バリに運ばれて売られている。もちろんジャワとバリではゴングの大きさや厚さなどが異なるので、バリ側が、バリのガムランに合うような大きさを注文して持ってきてもらう。バリの調律職人によって最後に音を調整するだけでゴングは売られていく。
 バリにはゴングを作る職人の数が減ったことや、人件費がバリの方が高いこと、ジャワのゴング職人の方の腕がいいなど様々な理由があるのだが、それでも自分達のガムランの楽器を自分達で作れなくなってしまったのは、ちょっぴり寂しい気がしてならない。楽器屋にたくさんの吊り下げられて並んでいるジャワから運ばれたばかりのゴングたちから、不安に怯えるこんな言葉が聞こえてきそうだ。
「ココハ、イッタイ、ドコ? ワタシタチ、コレカラ、イッタイドウナルノ? ココデ、ウマクヤッテ、イケルノカシラ?」

使われなくなったコインの行方

2009年01月07日 | バリ
 インドネシアでは500ルピア以下のコインがほとんど流通しなくなってしまった。もちろん貨幣価値がないわけではなく、単に流通していないだけなのである。たとえば、800ルピアのものを買おうと、1000ルピア札を出したとしよう。当然200ルピアがお釣りとして渡されると思いきや、コインが流通していないために結果的には飴玉をもらって終わりである。これに対して怒りをあらわにするインドネシア人を私はこれまで一人も見たことがない。にもかかわらずである。スーパーにいくと450ルピアなんて価格がつけられていたりする。これはどうみても500ルピアといっているのと同じである。値札に騙されてはいけない。
 少額コインが流通するのは、バイクの駐車料金である。たいていどこでも一回につき500ルピアなので、常にポケットに小銭を持っておかなければならない。大きい紙幣を出してもお釣りなんて持っていないからである。バイク乗りには必要なコイン、しかし流通が少なくなかなか手に入らないなんておかしいんでないかい?
 ところである楽器の調査で、カランガセム県にある工房を訪ねたとき、コインが楽器に使われているのに驚いた。通常、貨幣に手を加えたり、それ以外の用途に使っていけないものだからである。しかしこのコインは50ルピアコイン。100パーセントとは言い切れないが、このコインはもはや流通していないといっても過言ではない。流通しなくなったコインはこんなところに流用されていたわけだ。
 楽器製作者は「最近、50ルピアコインが手にはいらないから、それに似せた形を自分で作らなくてはならないんだよ」とぼやいていたが、まあ、あと数年もすれば100ルピアコインが流用されるようになるさ。100ルピアコインが死滅するのは時間の問題だもの。