社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「認知症の緩和ケアに必要な基本知識-進行期認知症患者の苦痛について-」平川仁尚(2010)

2011-01-04 17:22:18 | 医学
『緩和ケア』Vol.20 No.6 Nov.2010

認知症患者の抱える苦痛に対する緩和ケアの在り方について述べている。基本的な情報が集約されており、読みやすい。

引用
認知症患者の苦痛
①身体的苦痛⇒痛みをはじめとする苦痛症状、日常生活自立度の低下
 終末期認知症患者の特徴…認知機能の低下により、痛みに対して寛容である点、痛みをケア提供者に伝えることが困難である点

②精神心理的苦痛⇒不安、うつ、孤独感、恐れなど。またBPSD(behavioral and phychological symptoms of dementia)と呼ばれる認知症に特有の心理的苦痛がある。
 *BPSD…認知症に伴う徘徊、妄想、苛立ち、攻撃的行動、不潔行為、異食などの行動・心理症状

③社会的苦痛⇒家族関係・人間関係の悪化、金銭的問題

④スピリチュアルペイン⇒自分や周囲の人間が誰なのか分からなくなり、スピリチュアリティは大きく損なわれる。(中略)BPSDにより「こんな人とは思わなかった」という家族や周囲の嘆きがある。BPSDによりその人らしさは損なわれ、名誉も大きく傷つけられる。

終末期認知症患者の苦痛の評価…「名古屋式高齢者苦痛可視化スケール」が有効。スピリチュアルペインの評価は、「センター方式」と呼ばれる「その人らしさ」を評価するビジュアルシートがあり、これを応用することができる。


「緩和ケア=がん終末期患者」ではなく、ひろく様々な疾患、ひとへの活用が叫ばれている。本論文もそのひとつである。
社会的苦痛とスピリチュアルペインについては、患者本人のみならず、家族をも対象とした解説となっているが、まだまだ掘り下げられるであろうと感じられる範疇にとどまっているのが残念である。


緩和ケア 2010年 11月号 [雑誌]
クリエーター情報なし
青海社
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