社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「死生の理解をケア活動に活かす 臨床死生学のエッセンス」清水哲郎(2010)

2011-01-17 10:16:18 | その他
『ケア従事者のための死生学』清水哲郎、島薗進/編集 ヌーヴェルヒロカワ

 「死生学」という学問をどのように臨床の場に取り入れていくか。これまでは研究者による研究者のための書物が多かったように思うが、本書は現場で活躍するケア従事者向けに、より分かりやすい言葉と文章で書かれている。
 表記は「Ⅰ章 ケア従事者に求められるもの」からの引用。

引用
・(洋書で用いられている)<dying>は「死につつある・死にゆく」ではなく、「死に至る最期の生を生きる」とでも訳すべき意味で理解すべきです。

・人間が何を選択し、どう生きようとしているかに関わる意向は、次のような構造で理解できる。
 意向=状況に臨む姿勢(価値観・人生観)+状況把握(認識)
 この構造は、目の前に出された甘そうなお菓子を食べるかどうかという場でも、また、医師から説明され、すすめられた治療をうけるかどうかを選択する場でも成り立っているものですが、世界に対して、もっとも広い視野で、あるいは根本的に問う視点で、向かい、自分の生をどう認識するのか(=状況把握)、そして世界に向かってどのような根本的な姿勢・態度で生きようか、あるいはもうこれ以上生きないぞとなるのか(=状況に臨む姿勢)という対を、だれもが携えているはずです。これが「スピリチュアル」といわれる領域ないし視点だと言ってよいでしょう。

・最期の日々のケアは、まさによい関係のネットワークを支えることを核とすることでしょう。平たく言えば、孤独こそが、自分の生を否定することへと働く要因となるということです。



 「死生学」は、これまでバラバラに語られてきた/研究がすすめられてきた「死」や「生」に関するものを、「死生学」という名のもとに集められ、ともに置かれて、見られている…本書にこのようなくだりがあった。
 確かに、社会福祉学でも医学でも看護学でも、ケアの中心は「よりよい生を支援する」ことであり、これは決して新しいテーマではない。「死生学」はホスピス・緩和の領域にのみ存在するものだ理解されがちだが、決してそのようなことはなく、日常にあふれている事柄である。
 自身の実践の振り返りや終末期ケアの道筋として、きっと役に立つと感じた。


ケア従事者のための死生学
クリエーター情報なし
ヌーヴェルヒロカワ
コメント
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