徒然なか話

誰も聞いてくれないおやじのしょうもない話

茶室仰松軒

2024-07-08 21:26:17 | 日本文化
 「仰松軒(こうしょうけん)」は細川家菩提寺の泰勝寺跡である立田自然公園内にある茶室。もと京都の天龍寺塔頭真乗院に建てられていた細川三斎(忠興)設計の茶室を大正12年(1923)に復元したもの。内部を見られる機会は滅多にないが、茶事などが行われている日にあたると内部をじっくり見ることが出来る。
 わが家の本籍地となっている父の生家が泰勝寺境内に隣接していたこともあって、泰勝寺跡には度々訪れるが、仰松軒の内部を見ることができたのはまだ4、5回ほどしかない。
 ちょうど5年前にこんなことがあった。お盆前の墓参りを済ませて泰勝寺跡に立ち寄り、いつものように仰松軒をしばらく眺めていると、一匹のハクビシンが姿を現わした。こちらに気付いても驚く様子もなくじっと見ている。しばらく見合っていたがやがて竹林の方へと歩き去った。四つ御廟へお参りして帰るかと引き返そうとした時だった。不意にご婦人が現れた。園内には他には誰もいないと思っていたので一瞬ドキッとした。近づくと、僕より高齢に見えるが凛とした佇まいだった。婦人の方から声をかけられた。
 「タヌキみたいな動物ご覧になりました?」
 「ハクビシンですね」と答えた。
 「管理が全然なってませんね。あんな動物がわがもの顔に歩き回るなんて」
 「そうですね。地震の後始末も手付かず状態ですからね」と水を向けると
 「よく名所を回るんですが、どこも手付かずですからね」さらに僕が
 「熊本城ばっかり力を入れていますが、他の観光名所も早く復旧してほしいですね」と言うと、わが意を得たりとばかりに話が盛り上がった。10分ばかり立ち話をした後、挨拶を交わして婦人と別れたが、白いシャツに黒っぽいスラックス姿を見送りながら、ふと明後日は「ガラシャ忌」であることを思い出した。


現在の茶室仰松軒


5年前(改修前)の茶室仰松軒

創作舞踊「細川ガラシャ」