今年度末(3月末)を以てNHKの人気番組「ブラタモリ」が終了するという。2009年10月に始まったこのシリーズは第1シリーズから第4シリーズまで、パイロット版も含めるとこれまで合計317本、そのほとんどを見た。この1年ほどは正直、そろそろいいかなと思っていたが、いざ終わるとなると名残り惜しさが募る。タモリの後継者の話もチラホラあるようだが、同じ役割を担う人材となると簡単には見つからないだろう。
これまで見た中から、個人的に印象に残る3本を選んでみた。
江戸の盛り場 ~吉原編~
(第3シリーズ 2012年1月12日放送 アシスタント:久保田祐佳)
立教新座中学校・高等学校校長兼立教大学名誉教授の渡辺憲司さんの案内で番組が進行する。「吉原は江戸の流行の発信基地」とかなんとか言いながら、舟で吉原を目指す。柳橋から隅田川を北上、浅草を通過して吉原へと向かう。「船宿へ家の律儀は置いてゆき」と恥も外聞も打ち捨てて、というわけ。かつて使われたのは猪牙船(ちょきぶね)。「猪牙船 小便千両」と言って、相当金をつぎ込まないと舟上に用意された竹筒へ小便ができるようにはならないという。やがて、隅田川の西岸に見えてくるのが「首尾の松」。江戸時代から数えて七代目の松。「濡れてしっぽり首尾の松」てな調子で舟は吉原を目指す。この回の取材から笑福亭鶴瓶の新作落語「山名屋浦里」やそれをもとに新作歌舞伎「廓噺山名屋浦里」が生まれた。
熱海 ~人気温泉地・熱海を支えたものは?~
(第4シリーズ 2016年1月16日放送 アシスタント:桑子真帆)
ブラタモリ史上No.1の美女の呼び声高い京都府立大学で都市史がご専門の松田法子先生が初登場。その後、有馬温泉編や別府温泉編にも登場された。桑子真帆アナがアシスタントとなって1年、タモリとの息もピッタリ。
日本を代表する温泉地として、年間600万人の観光客が訪れる静岡県熱海市。江戸時代より前は、知る人ぞ知る小さな漁村にすぎなかったという熱海が、いまのような巨大な観光都市となりえたのは、熱海を支えたものは何だったのか?。何が熱海の発展をもたらしたのか? 熱海のお湯の秘密をひもとく鍵は、断崖絶壁に建つ巨大温泉ホテルから見る絶景にあった?三方を山に囲まれた、傾斜ばかりの地形を巧みに利用した江戸時代の温泉街の工夫とは?さらに、とある旅館の倉庫から「謎の版木」を発見!タモリが刷ってみると、そこに描かれていたものは!?
水の国・熊本 ~“火の国”熊本は“水の国”?~
(第4シリーズ 2016年4月2日放送 アシスタント:桑子真帆)
熊本県立第一高校の校内にある「ASO-4」火砕流堆積の露頭から始まり、水前寺公園へ移動。まず、住宅地を流れる川岸から湧き出す清水に驚き、天下の名園「水前寺成趣園」へ。池の底から湧き出す水。その秘密を探りにとある地点へ。そこは阿蘇から続く台地のヘリにあたる場所。雨水が浸透しやすい火砕流堆積で濾過され、台地のヘリである水前寺辺りで水が湧き出す仕組みに納得。
しかし、熊本の豊かな水の秘密はそれだけではない。それを探りに健軍水源地へ。そこにはなんと自噴する井戸が。タモリも初めて見たという。その水はどこから来るのか。実は「ASO-4」の下に「ASO-1」から「ASO-3」までの巨大な水がめがあるという説明に驚く。
この後、タモリ一行は街中に戻り、加藤清正による治水の巨大プロジェクト、大蛇行する白川の河川改修の痕跡を見る。さらに菊陽町の「鼻ぐり井手」へ行き、コメを飛躍的に増産させたという清正の巧みな利水技術を知る。こうして熊本が水の国であることを認識する。熊本地震の直前、そして桑子アナのラスト出演という思い出も残る。